第9話 マリア ②

寝台に横たわらされた、私。

儀式を担う神官が何かの木で出来た杖を握りしめて振り上げながら、小さな声で呪文の様なものを唱え始めた。

私の意識が有ったのはそこまでだった。

最後に覚えているのは激痛と、下腹部から突き破るように顔を出した双頭の蛇のような化け物が踊るように浮き上がるように現れた所までだった。


叫び声を上げることも出来ずに、消えていく意識の中で、一つだけ『願った』。

願う事に意味が有るかどうかわからなかったけど、願わずにはいられなかった。








目が覚めたのは、薄暗い広い部屋の中だった。

床に転がされるように寝かされた状態だった。

上手くいくとは思わなかったけど、何とか生き残れたようだ。

もし私が無事にスキルを得られるとしたら、母方の血統からして光系か空間系のスキルだと思えたので一か八かで心構えていたのが効いたようだ。

自分自身に掛けられるかはそれこそ賭けだったけど、遅効性の回復術を使えたのは幸いだったろう。


ゆっくりと手足が動くのを確認しながら、横たわったまま周りを見渡してみる。

私の身体の下にはこれでもかというくらいの血溜まりが出来ていて、足元まで流れ出していた。左隣を見ると壁で、右隣には幼馴染な公爵令嬢が私と同じく血塗れで横たわっていた。

二人とも儀式の時に着ていた白衣は脱がされていて全裸だった。

幼馴染の怪我の状態は私よりも酷くて、はらわたが全部ぶち撒けられたような有り様だった。


『間に合えは良いんだけど……………』


そろそろと身体を起こして心の中で唱えながら、上手く使えるかどうかまだわからない回復のスキルを掛けていく。


僅かずつ、散らばったはらわたが収束するように身体の中に集まっていく。

床に有ったモノがなくなった辺りで、彼女の口元と股間が白い粘り気のありそうな液体で濡れているのに気が付いた。

股間の液体は朱色が混じっているのに気がついて、吐き気を催す。


『………………………………………誰かに死姦されたか。』


一瞬だけ、彼女の貞操の事を考えてこのまま復活させずに済まそうかと思うが、上手く行けば全て無かったことに出来そうだからと思い直して続ける。


『………………………………………許さん!無事に帰れたら犯した奴らを始末してやる。』


怒りの余り集中力が途切れそうになるのを何とか堪えてスキルを行使して、儀式前の純潔を保った身体まで復活する事が出来たようだ。

彼女の息が吹き返しているのを確認してから、状態保存を掛けて眠らせておく。

今気が付かれても無事に此処から出られないかもしれないからね。


少し落ち着いてから自分の身体を確かめてみると、太腿の辺りまで垂れ落ちた白濁液が朱に染まっているのを見て幼馴染と同様に死姦されているのに気がついて、改めて怒りが込み上げてくる。

怒りの余り集中していると、私と幼馴染が犯されてる情景が目の前には浮かび上がってくる。

私達を犯していたのは、三人の神官。

私と幼馴染の他にも、もう一人の帰ってこなかった子爵令嬢が死姦されていた。

もう一人の令嬢は何処へ行ったのだろうか。

間に合うならば、救えるのならば助けたいのだけれど。


私達を犯した連中が今何処に居るのかを集中して思い浮かべると、あの三人の神官が豪奢な部屋で一組の男達と歓談しているのが視えてきた。

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