第15話 公爵家長子スズ

「………………………………………動いた、か。」


「何がでございますか、スズ様?」


「………………………………………状況が、いや、運命が、動いたのかな?」


私の独り言に、専属侍女のフユが、不思議そうに尋ねてきたので、無意識の内に返事をしてしまったのに気が付いて。


「いや、何でもない。お父様に報告が有ると伝えて、会えるように手配を頼む。」


「承知しました。」


部屋付きの侍女が残ってはいたが、報告書の内容に動揺して気に留めることが出来なくて。

動くべきか、待つべきか。

決めかねて、どうしようもなくて、後悔して。


………………………………………マリーに、先を越されたか。

ハルナと、アキツにも。

このまま何も手を打たなければ、シンを隣国に取られてしまうかもしれない。

取られなくても、シンの子を得るために、全てを賭けられる彼女達が羨ましい。

今動くべきか、決められなくて、お父様に相談するしか思い付かなくて。

今の王室には、シンの本当の価値を理解している者はいないのだろうか。

いたとすれば、王命を使ってでも、王族の子女を差し出してでも、手に入れるべきだろう。

それをしない、出来ないのは、何故なのだ。

取り返しがつかなくなるかもしれないのに。


昼食後に、お父様に呼ばれて。

お父様も、私と同じ情報を得ていた。

その上で、静観すると決められた。


「………………………………………何故ですか、お父様!」


「シンの意志が、見えないからだ。」


「見えれば、対処して頂けるのですか?そこまでは待てませぬ。手遅れになりかねません。」


「それでも、動くわけにはいかんのだ。」


「だから、何故に!」


「王女は全員、婚約者が決まっておる。公爵家では、彼に釣り合わぬのだ。勿論、お前でもだ。」


「………………………………………そんな!」


諦めるわけには、いかない。

シンが学園に戻ってきたら、私だけでも動くしかない。

後悔しないために。

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転生?男爵家嫡男の僕とお姫様達が死滅の運命を回避する為の領地改革 じん いちろう @shinn9930

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