第14話 第三王女エリー

「エリーお嬢様!『影』からの密書です。」


私の部屋付きのメイドであるリナから、魔力封印された封書を渡された。

私と私が許可した者以外の者が開封しようとすると即死する魔法を掛けてあり、更に開封された書面を読むには私の生体認証が必要な為、究極の秘匿魔法が掛かっていると言って良いだろう。

王族宛の親書を許可された付き人以外が開封するなんて、万死に値するだろうから当然なんだろうけどね。


「………………………………マリアが動いたか。ハルナとアキツもか。」


読み終わった書面をリナに開いたまま渡し、読むように促す。


王室としてはシンの子種が欲しいだけなので王命を発して王家の子女から誰かをあてがえれば充分とはいえ、シンの動向を常時見張っているのは私と公爵家のスズだけになってしまっていて。

皆、シンが男爵家のしがない嫡男でしかないと誤解しているうちに決めようとして動いていたのに。

隣国の、身分を秘匿した令嬢達に先を越されてしまった。


先日本気で逆プロポーズしたのに躱されてしまって。

焦りが無いと言えば嘘になる。

それでも私は第3王女という立場上、自由に動く事は出来ない。


「エリーお嬢様、行かなくて良いのですか?」


読み終わって封書ごと封印してからファイルし終わったリナが、ハッキリとした口調で尋ねてきた。


「私は立場上、ここから動けないからね。」


本当に、悔しい。

マリアが、羨ましい。


女王である母は、私とシンの婚姻には反対している。

状況的に、正妻にはなれないからだ。

私の大叔父様である先王の弟様がシンの当主代理として派遣されているうちに何とか状況を打破しようとしていたが、叶わなかった。


シンが上位の王位継承権を保持していることは秘密となっている。

私とシンとでは血縁関係は無いものの、正規の婚姻は結べないだろう。


私の継承権順位は四位。

シンは非公式ながら五位で。


シンが継承権順位を持っている事は大叔父様から直に聞いているかもしれないが、本当の事は言われていないだろう。


来週から学園が再開する。

何か決め手が欲しい。


母から私に対する政略結婚を決められる前に、何とかしないと。

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