第15話 マタハリ先生

『魔剣学園』・試験会場


「‥‥‥‥何で二人が入るの?」


「試験官兼保護者的な」


「有給消化です」


エドワード君とアレイちゃんはそっぽを向きながら私に言ってくる。


「ん~?でも、アレイ様~!今日は大事な新人冒険者の説明会があるって言ってませんでしたか~?」


「‥‥‥気のせいです」


「そうなんですか~?でも、私、アレイ様が近くにいてくれると安心します~」


ソフィアはそう言うとアレイちゃんに抱きついた。


「ん?‥‥‥‥おい!あそこにいらっしゃったぞ!!アレイギルドマスター!!やっと見つけましたよ!今日は、大事な新人冒険者達への説明会と懇談会が」


「‥‥‥ふん!」


アレイちゃんはギルド職員みたいな人に何かを投げた。

「早く戻って下さい!!アレイギルド‥‥‥」


ゴーン!


「マ、ス‥‥‥」


バタリ!


「キャア!!!大変よ!誰か倒れたわ!直ぐに治癒師か、お医者様を呼んで!誰かいませんか?」


「‥‥‥誰もいませんな」


エドワード君が清ました顔で私の隣でそんな事を言う。


「いや、入るでしょう?ここに。現代、最高クラスの治癒師さんが」


「僕は今日、学生試験官なので。それに、ほら、来ましたよ。学園が誇る。最高のお医者様が」


「ど、とうされました?怪我人でしょうか?」


そう言って現れたのは、藍色の髪に眼鏡をかけた白衣姿の若い大人女性だった。


「おぉ、マタハリ保険医」


「マタハリ先生だー!今日も可愛い!」


学園の関係者達が次々にその保険医の名前を言っていた。


「あわぁ!!人が倒れて?学生試験官は直ぐに医療用のタンカを持ってきて下さい!!」


「持ってきました!!マタハリ先生」


「それは!馬術用のソリです!!‥‥‥もう、それでいいです!それに乗せましょう!」


「はい!先生!!」


そう言いながら。保険医と学生試験官達は何処かに行ってしまった。


「‥‥‥彼女がマタハリ‥‥‥マタハリ・クイーンスですか。賢者の石の発見者の?」


「賢者の石?」


「はい!アレイギルドマスター‥‥‥ですが、その賢者の石も今や行方不明。現在、何処のどなたが持っているかも分からぬ。幻のアイテムなんです。レイカさん」


エドワード君は説明しながら。私達を会場の中へと誘導していく。


「えっ?いいの?あの人、放置して?」


「‥‥‥‥大丈夫です!多分」


アレイちゃんが明後日の方向を見ながら。呟く。


「まぁ、王都の冒険者ギルドは皆さん。優秀ですから。このポンコツギルマス‥‥‥」


「コキッ!コキッ!コキッ!」


アレイちゃんが自身の両手を鳴らす。


「優秀過ぎる。アレイギルドマスターが居なくても何とかなるのが王都の冒険者ギルドですから~!ねぇ?アレイギルドマスター?」


冷や汗をかきながらエドワード君が弁明する。


「はい!その通りですよ。ユグドラ君。良くできました」


「です~!です~!」


ソフィアはそう言いながら。その豊満な乳をアレイちゃんの頭に乗せるながら抱きつくのであった。


(アレイちゃんに抱きつく好きよね。ソフィアって)


私がそんな事を考えていると。


「おい、あれ!」


「ん?うわっ!昨日、突然、九聖光(きゅうせいこう)を辞任した。エドワード・ユグドラだ!」


「その隣は、冒険者ギルドのギルドマスター?!何でこんな所に?!それにあの豊満な女の子と‥‥‥普通サイズの女の子はいったい?」


おい!誰が普通サイズだ!誰が!


「いや、良く見たらどっちもめちゃくちゃ可愛い顔してるな!」


当たり前じゃ!昔は姫よ!お姫様!正真正銘のお姫様よ!‥‥‥‥今はただの死なない冒険者だけどね。


「おやおや、早速、注目の的ですな。レイカさんにソフィアさん!」


「‥‥‥どの口が仰(おっしゃ)りますか?エドワード・元九聖光?」


「はて?この、口が」ニコリ!


「ふん!」


シュン!!


「おっと!危ない!危ない!」


アレイちゃんが凄い速さで何かを投げると。エドワード君はすかさず避けた。


「‥‥‥‥相変わらずの速さですね。ユグドラ君」


「いえいえ、それ程でも~!では、レイカさんにソフィアさん。試験場はこちらになりますが‥‥‥我々も近くに居たほうが良さそうですな?アレイギルドマスター?」


「‥‥‥そうですね。私達が離れた瞬間。変な虫が沢山来そうですしね。私の可愛いソフィアさんに何かあったら困りますし。今日、一日は皆で一緒にいましょうか」


「うわぁ~!ありがとうございます~!アレイ様~」


ボイン!ボイン!


「おぉ、凄い揺れるぞ!」


「バカ、殺されるぞ!でも凄いな!」


「うゎ、最低、でも、隣の元九聖光ユグドラ様!素敵」


「あれが、アレイギルドマスター!小さくて可愛い!何でメイド服?」


「それで隣の普通サイズの女の子は?‥‥‥冒険者上がりかしら?」


あっちこっちで私達の話をする。学園試験官達や受験者達で会場はざわついていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る