第2話 呪いの解呪

あれから何年経ったのかしら?数年?数十年?数百年?


分からない、分からない、分からない。


もう何もかも分からない。


魔道王アルゴンとの決戦で勝利した私だったが、アルゴンの絶命の際、二つの呪いを受けた。


1つ目は不老不死の呪い。文字通り永久の時を生きる存在になった。


2つ目は、無意識の呪い意識は朦朧とし考えも覚束(おぼつか)なくなる呪い。



アルゴンとの決戦後、私は静かに戦場を後にしていた。


受けた。2つの呪いでカンナギの民に危害を加えないためだ。


あぁ、大切のカンナギの人々。どうか、魔道王アルゴン亡き、世界で幸せを。


そして大好きなお父様。残された姉弟(きょうだい)達をよろしくお願いいたします。


不甲斐ない近代の勇者で申し訳ありません。


お父様を悲しませる。馬鹿な私をお許し下さい。


それからというもの私は、人里離れた洞窟や魔物が巣くうダンジョン等に身を隠し。


日々、襲い来る魔物、グール、ゴースト、ドラゴン等といった。共謀なモンスター達と闘っていた。


幸運と呼んでも良いのかさえ分からぬ不老不死の呪いで死ぬに死ねない身体だったため。どんな、強敵なモンスターでさえ、時間をかけて倒す事ができた。


だが、そんな日々もずっと続くと磨耗していく。


人と話したい。人と触れあいたい。家族と。大好きなお父様ともう一度お会いしたいと。生きているとどうしても願ってしまう。


でも、それは叶わない願い。

人前でこの呪われた姿をさらしたら。どうなるかと無意識の中考えるだけで恐ろしくなる。


でも、でも、誰でも良い。誰でも良いですから。


早く、早く、私を殺してください。


早く、早く、この呪いから解放して下さい。



…………また、悠久の時は流れる。


モンスターを倒す。人のいない場所へ行く。

モンスターを倒す。また、違う場所へ。

モンスターを倒す。その繰り返し。


そんな日々を過ごしている中、私は疲れてどこか知らない洞窟の中で身を隠していた。


無意識にボーッとしながら時が過ぎるのを待っていた。


その時。


「え~と!!ここかな?おーー、居た居た、本当にいた」


洞窟の入り口から声が聞こえた。


「おぉ、依頼書のイラストと少し違うが合ってるかな?まぁ、聞けば早いか!」



入り口に立つ男性?は私の方へと歩み寄ってくる。近づかないで!!私には呪いが。貴方が近づいたら何が怒るか分からないわ。


私はそう言おうとしたが、長年、誰とも喋っていなかったので上手く喋れない。


「あっぅああぁあ」


上手く言葉が発せず私は目から涙を流した。

誰か、私を早く殺してください。目の前の貴方でもいいから。


「ん?あぁ、そうか上手く喋れないのですね。カンナギノ姫君、いいえ、古の勇者殿。暫くお待ちを」


その男性?そう言うと何かを呪文の様なモノを唱え始めた。


「ん?カンナギノ姫君様!もしや、呪いの類いに身体が蝕まれておりますな。ふむ」


男性はそう言うと詠唱を止め私の顔を見た。


私もつられて男性の顔を見た、その男性は綺麗な顔立ちでとても優しそうに私を見つめていた。


「おぉ、やはりカンナギノ姫君ですね。もうしばらく、お待ちください」


男性はそう言うと分厚く白い本を取り出した。


「では、呪いの解放を行いましょう。大丈夫!これでも自分、現代、最高の治癒師ですので」


男性はそう言うと真剣な顔つきになり、呪文を詠唱し始めた。


「悠久を生きるは太古の子孫 呪われし者を解放し解き放たん」


男性がそう、言い終わると突然、私の身体が光だし朦朧としていた意識がハッキリした。


「えっ?あっ、あはううう、!」


「おぉ、解呪。上手くいきましたな。おっとまだ、喋らない方が良いですよ。カンナギノ姫君ゆっくり、ゆっくり」


男性は、そう言うと私の背中を優しく擦り宥めてくれた。


「うぇ、うぇぇああああ。あああぁぁん!!」


久しぶりの人との触れあいに私は涙が止まらなく溢れ出た。


「…………、よく、頑張りました。本当に、よく、カンナギノ姫君様。もう大丈夫!大丈夫です」


男性は優しく被っていたフードを私に被せ優しく語りかけてくれた。

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