第3話 数百年振りの安眠

「泣きつかれて。寝てしまいましたか。…………暫し安らかな、安眠をカンナギの姫君。」



ここは何処?私は確か、無意識の呪いで眠ることすら許されない身体だった。


でも、今は違う。私は眠っている。眠れている。


数年ぶり?数十年ぶり?数百年ぶり?


分からない。分からないけど。


今はいい。今はただ、あの、忌まわしき呪いから解放されて眠れる事に感謝しよう。

目を閉じれることに


深い眠りへと落ちることに


そして私を救ってくれた治癒師様に。


ちゃんと眠れる事に感謝します。、ただ、当たり前の事に感謝します。


あぁ、ただ、感謝しよう。ありがとう、ありがとうございます。私の命の恩人に。




「あっうあああ、うああ」


「おっと、起きられましたか?カンナギの姫君。」


「うああ、あ」


声が上手くでない、上手く話せない。


「落ち着いて、落ち着いて下さい。数百年、………いいえ、五百年近く人と話していない状態です。喉の気管などがまだ上手く機能していません」


「うぁっうぁ?」


私は、目の前の命の恩人に向かって言葉とも言えない言葉で話しかけた。


「はい、ですが、今は話せなくても呪いから解放された。姫君のお身体なら数日後には、少しずつですが話せるようになっていきます」


「ぐがぁぅや。(分かった。)」


「はい、ですので安心して下さい、姫君」


目の前の恩人にそう言われ、起きた時は、パニックになりそうだった気持ちも落ち着いた。


「おっとまだ、自分の自己紹介がまだでしたね。姫君。すみません」


「うぁん、(ううん。)」


「僕の、名前は、エドワード・ユグドラと申します。カンナギ九聖光が一柱になります。職業は治癒師をしております。年齢は、15才です」


カンナギ九聖光、確か私がいた。時代にも数名いた事を記憶している。国でも最高位の名声と実力がなければなれなかったような?それを目の前の彼、えっと確か名前は、エドワードは、齢15才で選ばれたと言うこと?それに15才って魔道王アルゴンから呪いを受けたときの私と同じ年齢じゃない。ありえない。


「まぁ、とりあえず、僕の自己紹介は終わりということで姫君様。今は、ただ、お休み下さい。貴方には、現在、栄養と休息が急務ですので」


「ぬわがぁた、(わかったわ。)」


それから、エドワードさん?君?、どっち?は呪いから解放されて言葉もろくに話せず、食事や歩くこともままならない状態の私を献身的に介護してくれた。


良く見たら結構、顔も良い。

そして優しい。


「姫君様。今日はこちらの薬草が入ったお粥を少しずつ食べて下さい。ゆっくりですよ」


「わがっぁだ」


「最初に比べてだいぶ、声帯が良くなってきましたね。ですが、回復までまだまだかかりますね。」


「ヴぅん。(うん。)」


それからもエドワード君の献身的な介護は3ヶ月以上続いた。

その3ヶ月の間。エドワード君は、私が不老不死の呪いを受けてから経った、500年近いの長い時間で起きた。あらゆる歴史、文化、言語、人物等を丁寧に教えてくれた。


「んあう、これ?」


「そうです。そうです。当たりです。姫様。それが、現在のカンナギで使われている。言語です。しかし驚きました。姫様。姫様の覚えの早さには驚かされてばかりです。」


「あんがどう。(ありがとう。)」


「声帯の方ももう少しで治りそうですね。後、1ヶ月もすれば普通の人と変わらずに話せるようになるでしょう」


「そぶなの?(そうなの?)」


「えぇ、治癒師である。僕の判断ですので。間違いなく」


「やっだぁ、やっだぁ、。(やったぁ、やったぁ。)


私はついつい嬉しくなり。エドワード君に抱きついた。


エドワード君は、いきなり私に飛びつかれて少し照れくさそうだった。

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