第7話 魔法適正

私はカンナギ・レイカ


500年前に魔道王アルゴンとの死闘の後。不老不死の呪いと無意識の呪いをかけられ500年という悠久の時を頭が霞がかった状態で過ごした。


そんなある日。洞窟でボーッとしているとある男の子が現れた。


名前はエドワード・ユグドラと言うらしい。

なんでも治癒師らしく。そんな彼はわざわざ。私を見つけ出し500年苦しめれてきた。2つの呪いを解呪してくれたのだ。


それだけではない。500年前にもう一生会えないと思っていた。亡きお父様。カンナギ・アルベルトを彼の憑依術で憑依させ。


もう2度と会えないと思っていた。お父様に再開させてくれたのだ。


彼、エドワード君には感謝しかない。

感謝しか無いのだけど。

私の呪いが解け。介抱が必要と無くなったと分かるや。荷物を纏めて。彼の故郷。王都アルベルトへ帰るから私とは御別れです。さようならと言われてしまった。


私が理由を聞くとなんでも王都アルベルトの地下には五大迷宮の一つで私の名前を冠した、レイカノ大迷宮があり。


その大迷宮の扉を開く条件が、私の呪いの解呪だったらしく。それが達成した今、急いで王都に帰るからさようならとの事。


でも、私はこの500年でこの大陸が、カンナギがどう変わった何も知らない。この時代には彼、以外に知り合いはいないのだ。


だから、私は彼にまだ側にいて欲しいと思って。彼のフードを掴み。ビリビリに破いてしまった。


途方にくれる私にエドワード君は、(王都までの護衛をお願いします。)と言ってきた。


でも、私は気づいた。彼が急いで王都へ向かおうとしたことも。私がフードを破ってしまった事も彼の計算で、本当は私を王都へ連れていくための芝居だったんだと。


そして、今、私が数年間さ迷っていた。『禁忌の森』を出る為に2人で道無き道を歩いている。


「しかし、姫君。よくこんな『禁忌の森』で数年もさ迷っておりましたね」


エドワード君が私の前を歩きながら。私に話しかけてきた。


「ちょ、ちょっと待って。私が護衛なんだから。私が前を歩くわ。わっぶ」


私は慌ててエドワード君の前へ出ようとして転んでしまった。そんな、私に彼は右手を差し出し起こしてくれた。


「姫君。大丈夫ですか?」


「‥‥‥えぇ、大丈夫です。お気になさらず」


「姫君。僕は姫君に護衛をお願いしましたが、別にあれは建前で言った事ですので。余り張り切られて、怪我をされても困ります。それに数ヶ月、姫君と居て分かりましたが。姫君がポンコツなのは理解しましたので大丈夫ですよ」


「誰がポンコツよ。それに建前とか本当の事言うし。君、結構、辛辣よね」


「そんなことありません。これでも、僕は僧侶の資格も持っているんですよ」


「なんで治癒師が僧侶の資格を持っているのか気になるんだけど」


「それは企業秘密です。先を急ぎましょう」


エドワード君はそう言うと私の右手を掴んで前へと歩き出した。


ちょっと、なんでいきなり手を掴むのよ。まったく。

?、ふと、彼に掴まれている、彼の内側の掌の感触に違和感を覚えた。


(このエドワード君の掌の内側の感触。治癒師のそれと全然ちがう。まるで戦場で、ずっと闘っていた戦士の掌じゃない?それに彼の手をよく見ると切り傷がふさがった後があるし。君、本当は何者なの?)


「しかし、この『禁忌の森』は厄介ですね。来るときも結構大変でしたが、特に出てくるモンスターが強い事、強い事。気配遮断の魔法で存在を消していたので行きは良かったのですが‥‥‥‥」


「良かったのですが?」


「今回は姫君が一緒なので。モンスターに居場所がバレた見たいですね」


その瞬間、森の奥からワイルドウルフとデスラビット数匹が群れを成して私達に突っ込んできた。


「ちょっと、気づいてたなら、もうちょっと早く教えてよ」


「いえ、姫君ならこのくらいとっくに気づいているものかと(笑)」


こ、こいつ~。いくら呪いを解いてくれた恩人だからって調子に乗って~!これだから残念美形は嫌なのよ。

顔が良ければなんでも許されると思って生きてるんだから。


どうせ、この戦闘が終わったら(すみません。姫君、貴方の闘う姿が見たくて。つい、モンスターに囲まれていることを言いそびれました。)とか、言うに決まってる。


そして、私は素直に謝罪を許してしまうのだろ。私って単純すぎ?


「姫君、ボーッとしないで下さい。来ますよ。それ、と」


エドワード君はそう言うと。口頭で呪文は唱えず。即座にファイアボールをワイルドウルフの群れへと飛弾させた。


は?無詠唱魔法?!しかも何、あの威力!ファイアボールって確か、初級魔法とか言ってなかったっけ?!

君、本当に治癒師なの?


そんな事を考えつつ、闘いは順調に進み。あっという間に最後のデスラビットわ残すだけになった。


「カンナギ剣術・閃き!!」


「ピギャァァ!!」


最後のデスラビットの断末魔で戦闘は終了。


「さすが姫君。今は無きカンナギ剣術が目の前で見れて僕は光栄です。」


「え?今、カンナギ剣術って無いの?」


「そうですね。今の主流の剣術はカグラ剣術ですね」


「カグラ剣術何それ?」


「東方出身の方で現在、私と同じ九聖光の1人。カグラ・ヨルという方が広めた剣術ですね。元々はヨルさんのお父様が各地で道場を開き。少しずつ門下生を増やしていき、ヨルさんの代で。この大陸‥‥‥アリーナ魔法世界の七大陸の1つである。アルトネ大陸にカグラ剣術を定着させたのです」


「へ~!そんな凄いんだ。カグラ剣術って。私も覚えようかな?」


「姫君の剣術は、もはやカンストしているので変に他の剣術を覚えなくても大丈夫そうですが」


「そっそうかな?私の剣術凄いかな?!」


「‥‥‥そうですね。もはや、異次元の域かと」


「そうなんだ。それは残念」


「そうですね。剣術はもう鍛えようがありませんが、魔法の方はいかがですか?」


「魔法?私、魔法の才能は皆無よ」


「皆無?‥‥‥そんな筈はありません。カンナギの王族は代々皆様。何かしらの魔力適正を秘めてお生まれになります。それは姫君も例外ではない筈です」


「そんな事。言ったって昔、お城で私の魔力を計り水晶で測ったら反応し無かったもの」


「計りの水晶に反応が無かった?」


「う、うん」


「それは変ですね。計りの水晶は厳格にその人の魔力を測ってくれる。アイテムです」


エドワード君は何かを閃いたのか、アイテムボックスから何かを取り出した。


「姫君。これはつい最近、作られた。計りの水晶です。こちらに手をかざしてください」


「分かったわ」


私は、彼に言われるがままに水晶へ手を置いた。

すると計りの水晶は黄金に輝き始めた。


「‥‥‥やはり」


「ねぇ、何がやはり、なの?」


「姫君はちゃんと魔力適正があります。それもかなり高純度の魔力を、要していますね」


「本当に?」


「はい、恐らくですが、500年前の計りの水晶では、姫君の魔力量を測りきれず。機能していなかったのでしょう。ですが、さっき使ったこの計りの水晶はどんなに高い魔法量でも測れる現代の計りの水晶なので。」


「私の本当の魔力量が測定出来たってこと?!」


「はい、その通りです。‥‥‥‥姫君」


「は、はい。」


「王都へ着いたら。僕と一緒に魔剣学園へ来ませんか?」


「魔剣学園?何それ?」


「魔法や剣技の才能があるものが、アルトネ大陸中から集まり。魔法や剣技を学ぶ為の学園です。そこに入学できれば。生徒専用の寮もありますので。数年間は衣食住に困ることもなくなります。どうでしょう?僕と一緒に魔剣学園へ行きませんか?」


私は一瞬。どうするか決めかねたが、一文無しに家も無し。入学できれば衣食住が約束されると聞いて。私は決断した。


「わ、私、エドワード君の誘いに乗るわ。私を魔剣学院に連れてって。お願いします」


私はそう言うとエドワード君の右手をギューと握った。


「いたたた、はい、お願いされました。では、王都へ着いたら。迷宮もそうですが一度、僕と共に魔剣学院へ参りましょう」


エドワード君はそう言うと前へとまた歩き出した。

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