第10話 ナルーシスト試験官
昼食を済ませた。私達は冒険者登録の受付の前に来ていた。
「こんにちわ~!新規で冒険者登録をしに来たんですが。」ニッコリ!
エドワード君は、張りぼてのような嘘臭い笑顔を浮かべながら、受付嬢に話しかける。
「はい!新規の冒険者登録ですね?‥‥‥‥‥エドワード・ユグドラさん?!!!何でここに?!!ギルマス!ギルドマスターを呼んで来ますので!しょ、少々お待ちを!!」
受付嬢がそう言いながら。スタッフ用の扉の向こうに行ってしまった。
「はいはい、お待ちしてま~す」
呑気に手を振るエドワード君。‥‥‥‥やはり、彼は只者(ただもの)ではないのかもしれない。
‥‥‥‥しばらくの時間が経った。受付嬢はまだ帰って来ない。私はボーッとしながら行き交う冒険者達を観察し。エドワード君はさっきとは違う大陸新聞なるものを読み耽(ふけ)っている。
「おぉ、先ほどの記事の続きがありましたよ!」
突然、大声をあげる。エドワード君。
「‥‥‥つぅぅ!いきなり大声上げないでよ。耳がキンキンしちゃうじゃない」
「おっと、これは失礼。姫君!‥‥‥魔法・『治癒』」
スウゥゥ!!
エドワード君が何か唱えた途端に耳の痛みが無くなっていった。
「‥‥‥ありがとう。でっ?何でそんなにテンション高く大声をあげたのよ?」
「ええ、大変、失礼しました。‥‥‥いや、それがですね。数日前に西の大陸。『エウロペ大陸』・セルビアという所で魔神達を蹴散らしたのが西の大陸の勇者の元旅仲間らしいんですよ」
「それがどうかしたの?ていうか、私は、他の大陸にも勇者が入ることにビックリしたんだけど」
「あぁ、姫君も呪いを受ける前は勇者でしたな。あっちの勇者も現在、行方不明中らしいんですよ。これも姫君と同じですな」
「イヤな共通点ね‥‥‥その行方不明の勇者の元旅仲間がそのセルビアかしら?で活躍した?」
「えぇ、その通りです。面白いのはその後で。魔神達を討伐したお礼に国をあげての出国式典を催したらしいのですが、その新しい英雄様は、何故か、セルビアという国の食べ物の話をずっとしていたらしいんですよ。(笑)」
「‥‥‥‥何で、出国式典でグルメの話が出るの?」
「いえ、それは分かりませんな。ただ、一つだけ、分かるとしたら。この新しき英雄様はとてもユニークな方ということです」
「‥‥‥‥ただの天然さんなんじゃないの?」
「そうとも言えますな!ハハハ」
そんな、雑談をしていると。先ほどの受付嬢と後ろから‥‥‥‥後ろから可愛い衣装を着た銀髪の女の子が現れた。歳は‥‥‥‥私より若いのは確実で。悔しい。
見た目だけは私と変わらない。15歳~16歳位といったところだろうか?
「ギルマス!連れて来ました!!」
「はい!お連れ様です」
「どういたしまして、ギルマス!後は‥‥‥」
「はい、もう下がって良いですよ。ユリア。お疲れ様でした」
「了解です。ではでは」
受付嬢はそう言うと脱兎のごとく。この場を立ち去った。
「いや~!ギルマス自ら登場とは~!期待されてますね姫‥‥‥レイカ様」
おぉ、営業モードの時の呼び方に変わった。
「レイカ?‥‥‥‥」
一瞬だけ、私の顔を見る、ギルマス。
「それで?ユグドラ君。数ヶ月音沙汰無かった君がいきなり現れて。こんな、可愛い子を連れて冒険者登録とは、どういう事ですか?」
「可愛い?‥‥‥‥ん?」
何で不思議そうな顔で私を見るのよ!スカポンタン。自分で思うのもなんだけど。十分可愛い分類でしょうが、私は!
「どういう事ですかも、何も。ただ、僕はレイカ様の付き添いで着いてきただけですので。それ以外は何もありませんよ」
「数ヶ月音沙汰無しでギルドにも連絡を入れない人がよく言いますよ。全く。皆さん心配してたんですよ。ユグドラ君。連絡が無かった数ヶ月間はどこで何をしていたんですか?」
「おやおや、これは失礼。‥‥‥‥そうですね。『禁忌の森』で薬草集めを少々」
「薬草?」
「はい!」
エドワード君はそう言うとアイテムボックスから『禁忌の森』で採取した薬草群を次々に‥‥‥次々に‥‥次ってどんだけあるのよ。
「も、もういい!もういい!もういいです。この部屋がパンクします」
「あぁ、そうですか?まだまだあるのに。それにアイテムボックス内は冷暖房完備なので最高の状態で保存しておきました」
「‥‥‥‥では、これ等の薬草群は全てギルドで買わせて頂きます。『禁忌の森』の薬草等。普段ではなかなか手に入りませんからね」
「でしたら。買い取りの半分はこちらのレイカ様にお渡し下さい。僕はお金には余り困ってませんので」
「こちらの方にですか?‥‥‥分かりました。冒険者登録が済み次第。買い取り金の半分をお渡しします」
「へ?ねえ?良いの?エドワード君?それじゃあ、君が」
「あー!良いんです。良いんです。お金は国から溜(たん)まり貰ってますので。かなり余裕がありますので。それに、この薬草はレイカ様と一緒に集めた物ですのでお気になさらず」
「‥‥‥‥そ、そう!ありがとう」
「どういたしまして。」ニコリ
「ふむ、あの、ユグドラ君が女性に気を使うとわ。信じられません」
「人は進化するものですよ。アレイ様」
「‥‥‥‥そうですね。失礼しました。‥‥‥‥では、闘技場へと移動しましょうか?登録試験を行います」
「登録試験?!!そんなの聞いてない」
「まぁ、言ってませんからね」
「くっ!このを」
私は軽くエドワード君の肩を叩くが
スカッ!ドテーン!
勢い余ってスッ転んだ。
「まだまだ、甘いですな。レイカ様!ではでは、闘技場へ参りましょう」
「このオーーー!!待てーー!」
「本当に仲がよろしいですね」
‥‥‥
『闘技場』
広々とした岩壁に囲まれた。修練場の用な場所だ。
「冒険者登録に合格するには、至ってシンプルです。試験官である。」
「ナルーシストである。よろしくである」
「に、一撃でも入れられたら合格にします」
「なるほど」
「それでは‥‥‥試験開始!!」
ギルマスはそう言うと右手を下へ勢いよく下ろした。
「参るである。少女よ!『剣劇』」
ナルーシスト試験官は試験開始と同時に技を放ってきた。
「うわぁ、いきなり!‥‥‥カンナギ剣術『円舞』」
ナルーシスト試験官の攻撃を受け流す為。私は『円舞』でナルーシスト試験官の攻撃を防ぐのであった。
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