夢想

なにもない場所に手を伸ばしてみた

空はからっぽで

宙を泳ぐ手はあわれだった


冷たいくうきのなかでだけ

冷たい心はすこし熱く感じられた


彼女は生きながらにして

いつも死を望んでいた

死にはいつだって

希望があるから


でも

それは違うって

僕は

いえなかった


生の美しさを知ってしまったから

死を望むだなんて

そんな残酷さを伝える


なんて

できなかったから


届かない星は照明よりもずっと寂しい

触れられない夜の夢想への憧れだけに線を引いて

あたらしい星座を作って物語る夜は寂しい


知性はつねに夢や情熱を焼き尽くして

灰色の煙にただ美をのぞむ


なんて

できなかったから


永遠に比して無に等しい僕と君

儚い火のはなつ儚いかがやきだけが卑しくて

罪の意識に地にひざまづくだけの日々


ごめんなさい

ごめんなさい

ごめんなさい

ごめんなさい

ごめんなさい


生きていてよかったなんて

信じられなくても無条件に美しい世界

を望む


なんて

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