第4話 俺達が決めた事

 午後の授業を受けずに俺達は、俺の家に帰って来た。まだ、母さんは帰ってきていない。いつも帰って来るのは午後六時位だ。


 いつもなら俺は帰った後、お風呂を洗ってから自分の部屋で母さんが帰って来るまで勉強をしている。


 でも今日はそんな事出来ない。俺の部屋で二人で寄り添っていた。


「祐也。私、祐也と絶対に別れないから。あんな気持ち悪い男と付き合うなら死んだ方がまし」

「美琴、死ぬのだけは駄目だよ。俺の為にも生きて。俺だって美琴とは絶対に別れない。美琴が誰と付き合おうがそんなもの見せかけだと思っているから」

「うん。ねえ、祐也のお母さんまだ帰ってこないよね」


「まだ、二時間半位は帰って来ない」

「祐也。…私達一度だけお父さんの言いつけを破ったよね。私達の誓いの為に」

「うん」


「でもお父さんは、私を家の為に売ろうとしている。そんな人のいう事なんてもう聞く必要なんてない。

 私はあの人の言っている意味は、あくまであなたとの事を思っての事だと思っていた。だから高校卒業したら好きにしていいよって言う意味だと思っていた。

 でもそんな事じゃない事も今分かった。だから祐也、私達が決して別れない為の儀式をしよう」

「えっ?!それって」

「いや?」


 俺はゆっくりと首を横に振った。親の融資に名を借りて女の子を手に入れようなんて奴に美琴の綺麗な体は渡さない。美琴は俺のものだ。


 俺達はゆっくりと口付けをするとそのままベッドに横になった。



 二回目だからかもしれない。初めてしてから随分時間が経っていたからも知れない。

 始めはちょっと痛かった感じがしたけど、後は無我夢中だった。祐也も一生懸命な感じ。これでいい。絶対に私の体は祐也だけのもの。



 それからお母さんが帰って来る少し前までベッドの中にいた。

「そろそろ洋服着ようか」

「うん」


 

 それからお母さんは、少しして帰って来た。その時には二人でダイニングに座ってジュースを飲んでいた。


「ただいま」

 あら、美琴ちゃんの靴が有る。居るのかな?

「美琴ちゃんも居るの?」


「お母さん、お帰り」

「お邪魔しています」

「いらっしゃい。美琴ちゃん」

 えっ、この二人…。そう、でも何か有ったのかしら。



 お母さんが、ダイニングに来て買い物袋とバッグを置くと

「ちょっと、手を洗って来るわ。待っていて」

「うん」


 お母さんが、洗面所から戻って来て俺達の前に座った。

「こんな時間に美琴ちゃんが居るって事は何か有ったの?」

「実は、…」


 美琴は、彼女の家の事業がどうにもならなくなっている事、銀行が追加融資もしてくれない中で融資をしてくれる人が現れた事、それも低金利で。

 融資の条件として、その人の息子と自分が付き合わないといけない事を話した。


 お母さんは、しばらく黙っていた後、


「酷い話だけど、友坂さんの家がそこまでだったとは知らなかったわ。美琴ちゃんが、その真司とかいう男と付き合わないといけないという条件は書面にしていないでしょ。当然だけど。

 駄目元で色々条件を付けて見れば。例えば会うのは月に一回とか、会っても手は握らないし、それ以上の事は絶対にしない。

 食事は安い所でして、必ず割勘にする。そうしないと後でケチをつけられるから。この位なら向こうも聞くんじゃないかしら。

 後、会う場所はお金が掛からない所、それは美琴ちゃんが言えると思う。どうかな?」


「ありがとうございます」

「後、美琴の方からは連絡しない事も入れたいよ」

「祐也、それは条件では無いわ。美琴ちゃんがしなければいいだけの話だし」


「でも、いつまで会えばいいんだろう。ずっとなんてないと思いたいよ」

「それは難しい疑問ね。相手次第だし。融資が人質に取られているから。あえて言うなら友坂さんの家の事業が軌道に乗って融資の返済が出来るまでってとこかしら」


 そんな事、何年かかるか分からない。お父さんもお母さんも疲れ切っている。融資で何とかなっているけど、それだって…。



「美琴ちゃん、ご飯食べて行く?祐也が送ればいい事だし。美琴ちゃんのお母さんには、私が連絡を入れておいてあげる」

「そうさせて下さい。ありがとうございます」


 あんな家、帰りたくないのが本音だけど。何時までも帰らないなんて出来ないし。土日だけでも祐也の家に泊まれないかな。そうすればあいつと会う機会を少しでも減らせる。



 祐也のお母さんが電話で話をしている。あっ、終わった。

「今日はこちらで食べても良いって」

「本当ですか。ありがとうございます」

「じゃあ、早速支度するわね」

「私、手伝います」

「助かるわ」



 俺がもっと自分に力が有ったら、金が有ったら美琴がこんな目に遭わなくても済んだ。どうすれば力をそして金を得れるんだ。


 今、彼女は俺のお母さんと楽しそうに夕食の支度をしてくれている。本当は、これが俺達の将来の姿だったのに。


―――――

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