第8話 気に入らない
三連休の最初の休みの日に真司と会った。でも会っただけ。なるべく顔も見ないで時間稼ぎと私の興味を満たす為、駅の傍の新しく建てられた三つのビルのショップを一軒一軒ゆっくりと見て回って時間を潰した。
あの男は気に入った物が有れば買ってあげるなんて言っていたけど、そんな事する訳ないじゃない。
お昼もレストラン予約してあるなんて言うけど、あんな男と一緒に食べるなら〇ックで充分。それもなるべく急いで食べて別れた。
これで親の頼みも聞いたんだし、こんな会い方すれば自分が嫌われている事ぐらいわかるだろう。そしてその後は祐也と会った。
会った時はもう午後一時半過ぎていたけど、二人でのんびりと新しく出来た四階建ての建物。屋上は公園とスケートボードの遊び場になっている所で、一杯お話したり、一緒にジュース飲んで楽しんだ。
次の日もその次の日も思い切り祐也と遊んだ。祐也のお母さんがいない時は彼の部屋で楽しい事もした。
もうお父さんのいう事なんて聞かない。でもアレって高いからそれをしなくてもいい日に一杯しようという事にした。節約、節約。
祐也の部屋に居る時
「祐也、私バイトしようと思うの」
「バイト、なんで?」
「今のうち見ていると、いつどうなってもおかしくない。そんな時でも学校に行って祐也と一緒に勉強したい。
それに大学に入るのだってお金掛かる。今からバイトして貯めておけば、そんな時に色々対応できるから」
「話は分かったけど。美琴の両親が許してくれるかな?俺達未成年だから親の許可必要だし」
「話してみる。祐也、俺達って言った?」
「言った。美琴だけバイトさせるは心配だよ。俺も一緒にする」
「ふふっ、嬉しい」
私は家まで祐也に送って貰った後、両親にバイトの事を話した。
「美琴がバイト。駄目に決まっているだろう。大体なんでバイトなんかするんだ」
「私の為。ここの家がどうなっても学校で勉強したい。大学だって行きたい。その為に貯金するの」
「それはいい事だわ。あなたもこういう事なら良いでしょう」
「駄目だ。バイトだって何するんだ。俺は美琴がバイトするのは反対だ」
「私は賛成するわ。それに今の状況だったら、美琴にバイトして貰っていた方が安心だし」
「どういう意味だ?」
「その通りの事言っているの。融資受けたからって世の中がこの状況では、先行きに安心感なんてない。今の内に準備出来る事はしておいた方が良いでしょう」
「それは、分かるが…」
「美琴、大丈夫よ。バイト決まったら教えて」
「うん、祐也と一緒にバイトするから」
「「えっ?」」
「そ、そうなの。良かったわね。美琴」
「うん」
あんな男より祐也君の方がどれだけ美琴の事を大切にしてくれるか。バイト中も一緒なら安心だわ。
祐也の家は話を聞いて何も問題なくお母さんが賛成してくれた。
理由は、お母さんが午後六時過ぎに帰って来て食事の支度をしたり、色々していると丁度午後七時位になるからその後二人で夕食を食べれるという事も有るらしい。
そこで二人で放課後、バイトを探していたら私の家の最寄り駅の傍に有るファミレスで募集している事が分かった。
直ぐに行って店長にバイトしたい理由を言った所、その場でOKしてくれた。シフトは祐也と同じにして貰う条件を付けた。これも良いと言ってくれた。
バイト時間は、月曜から金曜までの午後四時から午後七時までの三時間。これなら出来る。それに学校でもバイト先でも祐也とずっと一緒に居れる。
真司と会ってから二週間が過ぎていた。もう連絡も来ないで欲しい。
☆ちょっと時間が遡ります。
俺、金丸真司。友坂美琴にせっかくいい思いをさせようと思って、親に頼んで金貰ってレストランもちょっと良い所を予約していたのに、洋服はいらない、レストランなんか入らない。
〇ックでいいと言われて、それも店に入ったらあっという間に食べ終わって出て行ってしまった。それも割勘。
何なんだ。こんなはずじゃなかったのに。女子高生なんて、お金をちらつかせて自尊心を煽れば簡単に落とせたのに。
どうも今までの女の子とは違う様だ。彼氏でも居るのか。俺にとってはあの子に彼氏がいようがいまいがどうでもいい。別に将来を約束する訳じゃない。高校生の間の遊び相手だ。
その後は、仕方なく、今付き合っている彼女を呼び出して遊んだ。この女は金をちらつかせただけで直ぐに落ちた女だ。
彼氏が居たとか言っていたが、俺と付き合う様になってから別れたと言っていた。馬鹿な女だ。お互い遊びなんだから。
その女と別れ家に戻った。親父は自社の貸しビルの一階で不動産会社を営んでいる。業界ではそれなりに評判が良くて、変な噂も聞かない不動産会社だと知り合いから聞いていた。
まあ、親父には頑張って貰って俺が継ぐときにもっと大きくして貰っておけばいい位に思っている。だから親父にはいい子顔で居るつもりだ。だけど今日の事は面白くない。
家に帰って、親父も直ぐに帰って来た。直ぐに俺は
「お父さん、今日美琴さんと会ったのですが、全然上手くいかなくて。相手の父親にもっと俺としっかりと向き合ってくれる様に行って貰えませんか?」
「どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたも無いよ。洋服を買ってあげると言ってもいらないと言うし、いいレストラン予約したから一緒に食べたいと言ったら、〇ックで良いと言われて、それも割勘だよ。そしてそれ食べたらどこかに行っちゃった。酷いと思わない」
「真司。お前が下心丸出しだから嫌われたんだろう。私は友坂さんの家に行った時に美琴さんに言ったはずだ。真司を気に入らなければそれでも構わないと」
「だって、俺と付き合う事が融資の条件の一つじゃないの?」
「馬鹿垂れ!融資の条件に相手先の娘さんとの交際を入れる馬鹿が何処にいる。私はお前が真摯にあの子に向き合って、付き合って貰えるなら良いと思って言ったんだ。
美琴さんと付き合いたいなら真摯に向き合ってお前の人間としての良い所を見せろ」
私は息子の真司が大切だ。跡取りとしても息子としても。だが、頭は私に似たが顔と性格は妻に似たらしい。金が有ればどうにでもなると思っている。
こんな性格じゃこの業界じゃ直ぐに足元を救われる。大学を卒業するまでに直さないといけない。
俺は自分の部屋に戻って考えた。なんだよ。親父も俺があの子と付き合う事を融資の条件に匂わせていたじゃないか。あれは違ったのかよ。単にきっかけを作ってくれただけなのかよ。
面白くねえな。可愛くていい体しているから、遊びたかっただけなのに。なんか一方的にやられたままでは面白くない。
あの子を俺のものにして親父を見返してやる。しかしどうすればいいんだ。
―――――
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