第9話 真司は考える
俺、金丸真司。筑和大学付属高校に通っている。偏差値七十八。馬鹿じゃ入れない高校だ。ここの生徒のほとんどは帝都大か地方有名大学に入るのが当たり前だと思っている。
俺も帝都大法学部に行こうと思っている。この学校内での成績だって悪くない。
俺は母親譲りのイケメン、背も高い。運動に興味無いし、かといって馬鹿食いの様な事も興味ない。はたから見れば極めて普通の頭のいい生徒だ。学校では紳士で通っている。
その上、金回りもいい。この学校は勉強に夢中で部活も真面目にやる連中も多いけど、だからってモテる訳じゃない。イケメンで、大人しく勉強が出来る俺はこの学校ではモテる方だ。
既に付き合っている女性徒は二人いるけど、口外しない事を条件に付き合っている。
当然体の関係もあるが、内申書に響くような事は表ざたにしたくないからだ。他の連中だって同じだ。
そんな俺だから親の融資の関係で見つけた友坂美琴も簡単に手に入ると思っていた。だけど、全く相手にされなかった。
「おい、金丸どうした。遠くを見て」
「ああ、清塚か。ちょっとな」
俺に声を掛けて来たのは清塚政臣(きよづかまさとみ)だ。背は高くないが甘いマスクと真面目さで人気がある。俺の友達だ。
「まあ、ちょっとな」
「ほう、お前が悩むなんて事がこの世にあるのか。イケメンで背が高くて頭も良い。その上金持ちの息子だ」
「だから悩んでいるんだよ」
「ほう、聞いてやってもいいぞ」
「嫌だね。お前の様に真面目様には向かない話だ」
「じゃあ、聞く事は止めるか。もうすぐ中間考査だな。楽しみにしているぜ」
「ああ」
こんな感じだ。だが変にオタクの所もなる。この学校ではこういう輩が多い。
しかし、あの女を落とすにはどうすればいいんだ。力ずくなんて俺の趣味じゃない。最初は自分を俺に高く売る為の演技だと思っていたけど、そうでもなさそうだ。
金に興味が無い人間なんているのか。ましてあそこの財政状況だ。
後は…うーん。自尊心はどうだ。その辺は結構持っている気がするな。どんな女の子でも自尊心をくすぐられたら何とかなるのか。
次に会った時はそっちで攻めてみるか。連絡でもして見るかな。出なければ父親を利用すればいい。
もう、あれから二週間が過ぎた。もうそろそろいいだろう。俺は家に帰るとポケットからスマホを取出して、友坂美琴に連絡した。午後六時だ。出るだろう。
ルルル、ルルル、ルルル、ルルル
出ない。無視されたか。もう一度。
ルルル、ルルル、ルルル、ルルル
また、無視された。仕方ない。父親に掛けているか。
ルルル、ルルル、ルルル、ルルル
『もしもし、友坂です』
出た。
『金丸です。美琴さんに連絡したいのですがスマホに出て貰えなくて』
『娘は今バイトをしています。終わるのは午後七時ですからそれ以降なら出てくれると思いますけど』
『分かりました。ありがとうございます』
バイトしている?金が必要なのか?
俺は、午後七時十五分位に友坂美琴に連絡した。
ルルル、ルルル、ルルル、ルルル
私は、バイトが終わって祐也に家まで送って貰っている途中にスマホが鳴った。取り出すとあいつからだ。思い切って電源をオフにした。
「美琴誰から?」
「あいつから。凝りも無くまた連絡して来た。最近無かったから諦めたと思ったのに」
「そうか、でもスマホの電源切ったままにしておく訳にもいかないだろう。出て断ったら」
「それが出来る相手だと良いんだけど」
前の時の事もある。仕方なく電源を入れると直ぐに鳴った。あいつからだ。
また切ってやった。
「祐也、またあいつからだ。どうしよう」
「しつこい奴だな。明日の朝までそうしたら」
「うん。そうする。じゃあ、明日駅で」
「うん」
私は祐也が家まで送ってくれた後、彼の姿が駅の方に向って歩いて暗くて見えなくなってから家に入った。
「ただいま」
「おかえり美琴」
「お帰り美琴。今真司君から俺に電話が有って。お前が出てくれないと言っていたぞ。電話位出たやったらどうだ」
「電話に出ようが出まいが私の勝手でしょ」
「美琴、融資の事を忘れたのか。電話位出てくれ」
「お父さん…」
どうしようもない親でも親は親だ。私は仕方なくスマホの電源をオンにした。直ぐに掛かって来た。しつこい男だ。
『はい』
『美琴さんですか。金丸です』
『どの様なご用件でしょう?』
『あの、もう一度会ってくれませんか。この前は大変失礼な対応をしてしまいました。出来れば、その…話だけでもしたくて』
『結構です。私はあなたと話をする事等何もありません。切ります』
『ちょ、ちょっと待って…』
あっ、切られた。
困ったぞ。俺の父親は、融資とこの話は関係無いと言っているが美琴の親はまだ条件だと思っているはずだ。仕方ない。俺は父親にまた電話した。
『美琴のお父さん。俺は話だけでもいいんです。俺の話を聞いてくれる様お願い出来ませんでしょうか』
こっちがお願いモードで言うしかない。
『そういう事でしたら娘に言い聞かせます』
『宜しくお願いします』
俺は父親との電話を切った後、連絡が来るのを待った。流石に連絡位来るだろう。
「美琴、話位聞いてやれ」
「嫌よ、あんな奴。話し所か傍に居る事も嫌なの」
「なあ、頼むから。家の事も少しは考えてくれ」
「お父さんが考えればいいじゃない。私は関係無いわ。そんなに言うなら家を出る。祐也の家に泊まらせてもらう。お金はいらない」
「美琴。お願いだ。この通りだから」
お父さんが私の目の前で頭を下げている。
「分かったわ。でも話だけよ。それもダラダラ聞く気は無いからね」
「頼む」
祐也に先に電話するか。
「部屋で電話する」
「美琴、ご飯先でいいでしょう」
「そうね。そうしようか」
あんな男に連絡するのに時間なんて構わない。タイミング合わなくて出なかったら向こうが悪い。
私は、食事してお風呂に入ってから、先ず祐也に連絡した。
『こういう訳で、どうしてもまた会わないといけないみたい』
『そうか、どうしようも無いな。また会う場所と日時分かったら教えてくれ』
『うん』
掛けたくない、掛けたくない、掛けたくない。でもどうしようもない。仕方なく掛けると、出た。
『もしもし、友坂です』
『金丸です。嬉しいです。お話だけでも聞いて頂けないでしょうか?』
『話だけだったらこれでもいいでしょう』
『出来れば会って話をさせて下さい』
何でよう。でも仕方ないか。
『…分かりました』
―――――
書き始めは読者様の応援が一番のエネルギーです。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★を頂けると嬉しいです。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます