第14話 作戦変更は金がかかる

 

 俺は清塚に聞いてやってみた髪型変更は、どうも友坂美琴には興味が無かったらしい。だが、ここで諦める訳には行かない。


 清塚にも相談した以上、成果を見せないと馬鹿にされる。そこで今度は洋服を変更する事にした。


 今までは男性雑誌を参考にその季節に合う服を買っていたが、今度はワンランク上の洋服にする事にした。


 しかし、そうなると俺だけの判断では決めきれない。そこで今付き合っている別の女の子に一緒に行って貰い、俺に似合うか見て貰う為だ。


 俺は、学校ですれ違いに

「後で連絡する」

「分かった」


 これだけ言えば分かるはずだ。彼女とは一ヶ月近く会っていない。頭が良く見た目もいい。スタイルも抜群だ。


 それだけに人気のある女の子だが、気位が高くて、扱いにくい。でも俺は、そんな子だから、それを尊重して上手くくすぐっている。


 彼女は初めてじゃなかったけど、結構好きもので、あの時は思い切り楽しめる。お互いにだ。だが結構金もかかる。今回もそれを覚悟で誘った。あいつはワンランク上のアクセサリや洋服が好きな女だ。



 私、浅野陽子(あさのようこ)。筑和大学付属高校一年。両親は厳格で格式が高い家に生まれた。兄がいる。


 普段は、品行方正に過ごしている。だからこそ、ストレスが溜まる。中学三年の時にイケメンで背が高くて、私を大切にする男のが居た。


 奥手だったけど、そんな奴だから揶揄い半分で私の初めてをあげた。痛いだけで全然面白くなかった。


 そしてその男の子は、頭が良かったけど、私と同じ高校に進学する事は出来なかった。そこで関係は終わり。


 今の高校に入って、直ぐに色々な男子が声を掛けて来たが、どれも私の気を引くような奴はいなかった。


 でも、別のクラスだけど背が高く、イケメンの男子、そう私の好みに合う男子だ。最初様子を見ていたけど、成績も悪くない、人への接し方も優しくていい。そして金持ちだと分かった。


 学校の帰り道、偶然一緒になった私は声を掛けて見た。

「金丸君?」

「えっ?」

 少し恥ずかしそうな顔をしてこっちを向いた。中々いい。そこで


「ねえ、時間ある。駅前のファミレスで少し話をしない?」

「ごめん、ちょっと用事が有るんだ」

「そう」

 私が誘って断られるなんて。



 数日して、私は昇降口で彼を待った。そして

「ねえ、今日はどうかな?」

「…いいですけど」


 この女、結構気位が高いので有名な子だ。あんまりこういうのは苦手だ。だけど二回も誘ってくれたんだから、今回は付き合うか。


「いいですよ」

「じゃあ、この前の所で」


 俺達は、自然な感じで駅前のファミレス迄一緒に歩いて行った。中に入ってテーブルに着くとドリンクバーを注文した後、一応礼儀だから


「俺、持ってきますよ。何がいいですか?」

「そう、じゃあミルクティにして」

「分かった」

 ふふっ、いいじゃない。


 彼女にはミルクティ、俺はブラックコーヒーを持って来た。何も話さない。お互いが一口飲んだ後、彼女が

「ねえ、金丸君の事教えて?」

「えっ、別に何にもないですよ」


 仕方なく家の事や俺が一人っ子だって事、家業は継ぐけど、希望としては帝都大法学部に入って官庁に入りいずれは政治家を目指す事を話した。


「まだ荒唐無稽だけど、希望としてはこんな感じかな」

「凄いね。今からそれだけしっかりとした将来を考えているなんて」


 ふふっ、良いじゃない。親が不動産会社を経営して、一人っ子、帝都大法学部から政治家を目指すなんて私の相手としては申し分ないわ。この男を何とか引き留めるには、そうね。あれがいいか。



 それから、俺達は三回目のデートの時、体の関係を持った。始めは勿論ラブホなんかじゃない。きちんとしたシティホテルだ。壁が薄いの気になったが、今日だけだ。


 浅野は、初めてじゃなかったけど経験はほとんど無い様で、乱れに乱れた。こいつ好きなのかと思う位に。


 こんなにも気持ちいいんだ。初めての時とは全然違う。これも私を満足させてくれるなら、付き合うか。



 それからも会ったが、学校では絶対に付き合っている事が分からない様にしている。全部スマホで連絡だ。


 だけど、誘えば必ず二つ返事で会うと言って来る。食事はそれなりのレベルのレストランだ。


 映画もエグゼクティブシート。偶に買ってあげるアクセサリや洋服は諭吉さんが十枚は飛んで行く。金のかかる女だ。でも高校一杯の遊び相手と思えば、見かけの良い浅野は俺にとって都合の良い女だ。




 私は、待ち合わせの午前十一時に金座四越の前に行くと真司は待っていた。この人が私より後に来る事はない。


「おはよ真司」

「おはよ陽子」

「今日は洋服見て欲しいって言っていたけど」

「ああ、ちょっとイメチェンして見たくてな」

「この前も髪型変えるからって言っていたけど?」

「まあ、気分だよ。それより入ろうか」

「うん」


 私から手を繋ぐ事はしない。でも男の方から腕を組む様に催促されないのは面白くない。真司はそういう所もしっかりと分かっていてくれる。


 紳士売り場に着くと

「どんな感じが良いの?」

「分からないから陽子と一緒に来た。教えてくれ」


 こういう風に言うのもいい。決してこれは如何だとは言わない。必ず決定権を私に与えてくれる。


 いくつかのテナントを見た後にこれからの季節に合わせてゴッチのロングコートを選んだ。有名なソルバトーレのデザインだ。


 それが買い終わると

「陽子、いいよ」

「ありがとう」

 

 そう、必ず私の欲しい物も買ってくれる。私はコルチェのイヤリングを買って貰った。さりげなく似合うと褒めてくれる。


 そして少し遅い昼食を別のSCの中にある有名なお寿司屋さんで食べ終わった後は、タクシーでホテルに異動して…。そしてデートが終わる。


 こんなに私にとって都合の良い男は早々に見つからない。一生離すものか。でも髪型と洋服と言い、何の為に替えているんだろう。私の為で無い事は分かる。

 これだけの男だ。多少遊び相手は欲しいんだろう。それは許してあげるか。



 陽子を誘って洋服を買ったが、もう十一月も半ばだ。十二月の最初に二学期末考査がある。それが終わった後位に会う約束するか。


―――――


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