第13話 何とかならないのか
あいつから連絡が有った。それも両親が一緒に居る所で散々待たせて出た。
『はい』
『美琴さんですか?』
『あんたに名前呼びされる覚えはないと言ったでしょう。切るわよ』
『ま、待って下さい。友坂さん。来週の土曜日会えませんか?』
『忙しいです』
『じゃ、じゃあ次の三連休の金曜日は』
しつこいなあ。せっかく三連休ずっと祐也と一緒に居ようと思っているのに。
ふと、お父さんとお母さんの顔を見るとお父さんは、何とか会ってくれって顔をしているし、お母さんは仕方ないという顔をしている。会いたくないのに。
『分かったわ。再来週の金曜日の午前中なら会ってあげる。ところでなんで会うの?』
『その、会って頂ければ分かるかと』
『何言っているの?意味分からなんだけど』
『とにかく会って下さい。話をしなくてもいいです』
そこまで言うか。いったいなんで会うのか分からないけど、会って直ぐ別れてもいいんだ。
『分かった』
スマホの会話を切ると
「美琴、もっと優しい言い方は無いのか?」
「お父さんに言われる筋合いは無いわ」
「私、もう寝る」
「美琴…」
美琴が自分の部屋に行くと
「お父さん、何であんな事言うの。美琴に任せればいいじゃない。真司君が諦めたらそれでいいじゃない」
「でも、そうしたら融資が」
「いいじゃない、融資が止まっても。もう覚悟で来ているんでしょ」
「それはそうなんだが」
「だから二人で頑張りましょう」
「そ、そうだな」
私は、次の朝、登校しながら祐也に
「祐也、またあいつから連絡が有った。再来週の金曜日祝日でしょ。その日に会いたいんだって」
「…そうか。会うのか?」
「仕方ないじゃない。でも話もしなくて良いから会ってくれって。訳分からない」
「何か、気持ち悪いな。俺一緒に行くよ」
「えっ、でも一緒に会えないでしょう」
「うん、だから分からない様に近くで見ている。何も無かったらいつもの所で待ち合わせしよう」
「そうだね」
真司の事は有るけど、それまで二週間もある。祐也とは一緒に登校してお昼も一緒に食べて、一緒に下校して一緒にバイトして一緒に帰った。
これであいつなんかいなかったらどれだけ幸せなのかと思って仕舞う。
俺、金丸真司。イメチェンの最初として髪の毛のカットを変える事にした。今はツーブロックで気に入っている。周りも好感を持っている様だけど、美琴さんは、見向きもしてくれない。
だから思い切りショート、勿論GIカットって訳じゃないけどスッキリするような感じにした。
いつも行く美容室の人が、今のカットもとても似合っているのに残念だと言っていたけど、いざカットして見ると結構似合っていた。
同じ時間に美容室に居る女性達も目を丸くしている。元々女親似だからベースは良いと思っている。
これで行ってみよう。なにか反応があれば、この方法で進めて彼女の心をこっちに向かせる。
そして約束の金曜日、また駅の傍の交番の前で待ち合わせした。いつもの様に午前十時きっかりに行くと、似ている様で似ていない、いや似ている男が居た。
「美琴、あいつか?」
エスカレータを上がった所で左に曲がる前にあいつを二人で見た。
「多分、注意して行ってみる」
「気を付けて」
ゆっくりとその男に近付くと
「あっ、友坂さん、おはようございます」
えっ、髪型が全然違う。前はツーブロックで決めている感じだった。今はGIカットまではいかないけど、短くすっきりとした髪型になっている。
「おはようございます」
「あの、またいつもの〇ックに行きませんか」
へーっ、〇ックで良いんだ。
「良いわよ」
信号を渡って、直ぐの所にある〇ックに行って、私はバニラシェイクを頼むと何とあいつも同じ物を頼んだ。空いた席に行くと、何故か周りの女の子がジロジロと見ている。こいつの事だろう。
それに前はコーヒーにポテトだったのに今日は私と同じシェイクだ。気持ち悪い。もうこれ飲まない。私が黙っていると
「あの、この髪型どうですか?」
「知らないわよ。そんな事。それより今日の用事って何ですか。話もしなくて良いってどういう事?」
「い、いえ。髪の毛切ったので見て貰えればと思って」
この男馬鹿じゃないの。私に取っては如何でも良いわ。
「もう見ました。用事が済んだなら帰りますね」
「……………」
行ってしまった。いいや、これからだ。俺が仕方なく頼んだバニラシェイクを飲んでいると
「あの、お話できませんか」
「えっ?」
何故か、近くに居た女の子二人が声を掛けて来た。あんた達なんかどうでも良いのに。
「済みません。用事が有るので」
美琴さんの手の付けてないシェイクと俺の飲みかけのシェイクを片付けてから外に出ると、まだ彼女の後ろ姿が有った。
何とはなしにその後ろを付いて行くと男の姿が見えた。彼女が手を振って近づいて行く。そして直ぐに彼女の方から手と繋いでどこかに行った。
あいつが美琴さんの彼氏か。俺の方がよっぽどかっこいいのに。
私は〇ックを出て近くで待っていた祐也の傍に行った。
「待ったぁ?」
「待ったというか、〇ックに入って十分も経っていないんだけど。良かったのか?」
「いいんだよ。さ、行こうか」
「あ、ああ」
俺は、話も無いのに会ってくれって言うから、もしかしたら美琴に危ない事が起きるかも知れないと思って一緒に来たけど、何も無いどころか、直ぐに終わってしまった。真司とかいう奴、何の目的で美琴と会ったんだ?
―――――
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひフォローとご評価★★★を頂けると嬉しいです。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます