第6話 結婚への決心
ひとり自室に戻ったラズリスは、ソファーに深く腰をかけた。
侍女のマリカとは目があったが余計なことは言わなかった。
「ふぅー」
大きなため息が出た。
まだ、17才。結婚なんて考えていなかった。
まだ、恋もしてないのに。
学園に通うことも出来たけど、趣味の読書や刺繍、孤児院や教会のお手伝いをすることが楽しくて、家庭教師を雇ってもらっていた。
「そうだ、お母様にお話を聞いてもらおう」
母の部屋を訪ねることにした。
マリカに母のお部屋に訪ねることをあらかじめ伝えてもらうことにした。
「マリカお願いね」
「承知しました。お嬢様」
母の了承をもらい部屋を訪ねた。
コンコンコン三度ノックして、自分の名を告げる。
「お母様、ラズリスです。お時間よろしいのでしょうか?」
「お入りなさい」
先程とは違い、張りのある声だった。
少し安心した。
応接室での話の後、三十分程経っていたので、お互いに落ち着きを取り戻していた。
薄い笑みを交わすことができた。
「ご心配をおかけします」
ラズリスは母の顔色を伺っていた。
「おめでたいことだわ。まさか兄2人よりも先に結婚が決まるなんて」
母の複雑な心境がよくわかる。私だってそうだ。深く頷いた。
バルト様の評判はあまり良くないものだったが、貴族の結婚としては珍しくもない。
個人よりは家同士の契約みたいなものだ。
「男の子が2人もいるし、お父様はね、ラズリスを嫁がせたくはなかったのよ。だから学園に行かないことも直ぐに受け入れたんだと思うの」
「えっ、そんなこと…」
父の溺愛ぶりにぞっとした。
「伯爵家に嫁ぐんでもの、親としては安心しないとね」
両親の仲のよさをみていると羨ましい気持ちになるが、やはり貴族の娘は愛だの恋だのと言っていられないのかもしれない。
小説のような恋なんて一生出来ないかもしれない。諦めるしかないのかも。
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