第2話 政略結婚の理由

 ジーン・ミランジュ伯爵は焦っていた。


 次男のバルトの女好きには困っていたが、娼館通いでは飽き足らず、あろうことか取引先である 元平民で男爵の次女リリアンを妊娠させてしまったのである。

 貴族の娘であれば渋々だがすぐにでも結婚をさせたかもしれないが、爵位を買った元平民の男爵家の娘など、言語道断である。


 侯爵家の娘と 婚約中の長男レオナルドにも汚点がつく。何より貴族としての面子が許さない。


 元平民の男爵家は雑貨や日用品の仕入れや販売など他国相手にも手広く商売する中々のやり手であり、何かと融通をきかせてくれる男爵を手放すのには惜しかった。

 しかし、である。


 苦々しいことに、次男は以前も付き合いのある格下の令嬢を妊娠させ、金の力で揉み消したこともあった。

 今回もなんとか説得し金で解決しよう試みたが、男爵は娘を囲った。

 娘は本気で次男のバルトを愛しているようだ。

 困った。金目的の女の方が扱いやすいのに。


 次男の方はというと、妊娠した元平民の娘など全く興味がないようで、女遊びに懲りている様子などない。


 全くもって腹立たしい。


 無理に結婚をさせたところで長続きするはずもなく、浮気ぐせのある娘婿に愛想を尽かした男爵との取引に差し支えるかもしれない。


 更に、この国ベリル王国は出産率は低くないものの、3才までの子の生存率は7割と高くない。

 無事に出産したとしても跡取りなる年まで生長らえる可能性も高くない。子どもだけ引き取り、娘は金を渡して男爵に引き取らせよう。


 自分にとって都合のいいことを色々と考えた挙げ句、もし男爵の娘が男の子を産んだ場合、跡取り候補においておくのも悪くはないかもしれない。


 そうと決まれば男爵を説得し、娘を領地の離れに住まわせればいい。

 付き添いも一緒に住んでもらえば男爵も納得してくれるだろう。


 あとは替え玉の次男の嫁さがし。



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