第15話 結婚式前夜
結婚式が明日にせまり、子爵家の家族は久しぶりに全員揃い夕食を摂ることになった。
お互いの近況を話し、何よりも末娘の婚姻を喜んだ。
「ラズリスおめでとう」
結婚に至る詳細を知らない兄たちは急な結婚にもかかわらず手放しで喜んだ。
「ありがとうございます。お兄様たちよりも早く結婚することに少し戸惑ってます」
意味ありげに言ったラズリスに長兄が、
「そんなことは気にしなくていいよ。ラズリスさえ幸せになれれば、僕たちは嬉しいよ」
長兄が次兄とラズリスを交互に見ながらそう言った。
眉間に皺を寄せ複雑な表情のロペスをミシェルは見逃さなかった。
「旦那様。花嫁の父の心境はわからなくもないけれど、そのお顔は無いですわ」
普段父に対し苦言を言わない母が珍しく目を細めて言った。なかなかの迫力だった。
ミシェルは事情はどうであれ、晴れの日を迎え、一人娘を送り出すのは子爵家全員に笑顔で居て欲しかった。
「そうだな…。コホン。…ラズリス。心から祝福するよ」
ロペスの決意を込めた一言で家族は皆笑顔になった。
「お父様、ありがとうございます」
ラズリスは居直り、
「お母様、おばあ様からの指輪をありがとうございました。大事にさせていただきます」
「そうね、おばあ様がもしこの場に居らしたらとても喜んで下さったと思うわ」
母と娘の会話を聞いて、男性陣はさらに心が和んだ。
「はい、ありがとうございます。おばあ様は華奢で要らしたのか、どの指にも合いませんの。身につけて居たいのですが、どうしたらよいのでしょうか」
小指にはめるには大きすぎ、といって薬指にははめられない。手元にある指輪を見せ少し困った顔をしたラズリスにミシェルは
「チェーンに指輪を通してネックレスにしてもいいし、スカーフ留めにするのもお薦めよ」
はっと納得したラズリスは笑顔になった。やはり母に相談してよかったと心から思った。
ラズリスは祖母からの贈り物をできるだけ身につけていたかった。
「この指輪に付いている石はとても変わっているのよ。今は淡いグリーンだけど、外に出るとピンクになるのよ。あなたの翠の瞳にぴったりだわ」
「そうなのですね。本当に素敵な贈り物だわ」
ミッシェルの言葉にわくわくした。
祖母から受け継いだ指輪の石は、ミントグリーンガーネットで、紫外線を浴びるとカラーチェンジする珍しい種類の石だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます