第16話 結婚式①

 夏の太陽が容赦なく照りつけ、空は抜けるような青空だった。

 今日は結婚式。


 結婚式会場であるレストランの東の庭にあるチャペルは想像を超えていた。


 チャペルの入り口は緑色の金属のフレームがアーチ状に作られ、植物の蔦が絡まっており、白の花が咲き乱れている。

 入り口からはベンチや祭壇が見渡せる。


 祭壇までは真っ直ぐに赤いカーペットが敷かれ、ベンチの端にも各々白い花の咲いた生花を入れた、高さが腰ほどまである花柄が彫刻してある白磁のプランターが置いてある。


 中に入ると両壁になる左右には、高さ2メートル程の木が式場が暗くならないように計算され、間隔を空けて一列に植えられている。

 祭壇は三段程の低い階段で少し高い所にあり、シンプルではあるが、白と金を基調にした重厚感のある作りになっている。

 後ろの白い壁は全体に大きな窓が造られ空と共に外の景色が見える。


 天井は壁代わりの木と木の間に金属製の背の高いポールが設けられ、幅が広い薄いレースが何枚も張られ上を覆っている。日よけの役目があるようだ。

 レースとレースの隙間やレース生地の天井からは太陽の光が所々漏れ幻想的な光が降り注いでいる。

 真夏にも関わらず木々の間やレースの天井、床も芝生なので風が通り屋外にしては涼しい。

 美しさに圧倒される。


 雨天の場合の式場はレストラン内のダンスホールの次に広い部屋に用意されていたが、今日は天気に恵まれ、庭のチャペルでの結婚式になる。


 披露宴会場はダンスホールが使用されるようで、披露宴だけの招待客でも早めに到着すれば、木々の間からチャペルの中の様子が見られるようになっている。


 移動も少なく新郎新婦たちだけでなく、親族や招待客なども身体的に負担が少ない。


 子爵家族は庭のチャペルを見てしばらく動けずに見とれていた。ミシェルはひとり涙していた。

 ここまで盛大に準備してもらえるなど、伯爵の様子からは全く予想も出来なかった。嬉しい誤算である。


 早朝から式の準備のために伯爵家の馬車に乗って来ていたラズリスは、まだチャペルを見ていない。見えないように準備室に連れられていた。


 式の時間は11時と決められていた。


 ラズリスはドレスの着付けを終え少し休憩に入っていた。

 ドレスは比較的動き安いとされるスレンダードレスで、裾の広がりも控えめではあるが、胸から裾までの装飾のレースは特に手が混んでおり誰が見ても一級品である。


 ヘッドドレスは花柄のレースを使用し、小さなダイヤモンドがいくつも縫い合わせてある。


 ピアスのダイヤモンドは子爵家の物で、ネックレスは伯爵家代々の物をお借りしている。

 大きなダイヤモンドと複数のピンクダイヤモンドが散りばめられたネックレスは重さもあった。


 化粧も派手すぎず、清楚で可憐な仕上がりはラズリス本来の素材の良さが活きていた。


 伯爵家のメイドは優秀だった。

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