第12話 初顔合わせ

 2日経ち、今日はバルトとラズリスの顔合わせのための昼食会だった。

 場所はミランジュ伯爵の経営するレストランの個室で、伯爵とバルト、子爵とラズリスになる。

 伯爵夫人は数年前、流行り病で亡くなっていたので、子爵も今日は夫人を伴っていない。


 建物は三階建てでバルコニーもあり、貴族が利用することもあって個室も多い。会談や商談のための大きな部屋やダンスホールなどもあり高位貴族の邸宅のようだった。

 オープンテラスもありレストランから庭に出ることができる。庭は広く建物の周りにあり、西側の庭の中央に噴水があり、周りにはベンチが設けられ、さらに予約すれば四阿でも食事やお茶ができ、開放的なプライベート空間も楽しめる。


 街からレストランへ行く道は広く舗装されており、緩い傾斜を上って行った先の小高い丘にレストランはある。景色がよく静かな場所なので、貴族や裕福な商人などに人気がある。

 ミランジュ伯爵は美食家であるためメニューも豊富で料理人の腕もよい。使用人も躾が行き届き、清掃や客への接待など申し分ない。


 レストランに着くと早速豪華な個室に通された。

 部屋全体はベージュとアイボリーで統一され、数は多くないが洗練されたデザインの調度品は品が良い。

 子爵とラズリスは個室の豪華さに緊張しながらも、センスの良い部屋に感心していた。


 ノックがあり、レストランの支配人と共に ミランジュ伯爵はバルトを伴って部屋に入ってき

「待たせたかな」

 子爵とラズリスは席を立って、それぞれ紳士淑女の礼をする。

「こちらのレストランは初めてかな」

「はい。初めてでございます」

 子爵は緊張して答えた。

「楽にしてくれ」

 伯爵は機嫌よく話した。


 伯爵の合図とともに前菜が運ばれてきた。

 給仕係が下がったタイミングで、伯爵は話を続ける。

「こちらの求婚を快く受けてくれたことに感謝している。式の日取りはこちらで決めたが、問題は無いね」

 有無を言わせぬ伯爵の口ぶりに子爵は、

「ラズリスをバルト様の伴侶に選んでいただき光栄です。式の日取りには異論はございません」

 伯爵は大きく頷きながら笑みを溢した。

「式場の事なのだが、こちらのレストランを1日開放しようと思う。庭に臨時のチャペルを造り大司祭を呼ぶ」


 子爵とラズリスは瞠目した。


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