第13話 ウエディングプラン

 大司祭を呼びつけるなど予想もしなかった子爵は、改めてミランジュ伯爵の権力を思い知ることになる。

 教会を貸し切るよりも費用がかかるので、 盛大で豪華な結婚式が予想される。

 今まで王都でレストランを貸し切り、庭での結婚式など聞いたことがない。裕福さや家格の優劣はせいぜい教会の規模や招待客の数で判断されていたが、この結婚式は桁違いである。

 簡易とはいえ、チャペルを建てるなど伯爵の発想がすごい。貴族たちの流行りになるに違いない。先駆けといったところだろう。

 レストランで披露宴を行うのなら、移動もない。通常なら教会から披露宴会場までの移動時間、馬車の長い列や乗降車順など、煩わしさが無くなる。使用人の数も減らせるだろう。


 子爵とラズリスは想像以上の提案に驚くばかりである。


 順調に料理が運ばれ世間話をしながら、食事が進んでいく。見た目も豪華過ぎず、シンプルな味付けでどれも美味しかった。

 伯爵はバルトに話をさせようとするが、話の広がりはなく尻つぼみになる。

 デザートが終わったところで、バルトにラズリスを庭に案内するように促した。


「伯爵様、2ヶ月後でしたら、この人気のレストランではかなり予約が入っていたのではないのでしょうか」

「心配しなくてもよい。予約の日を振り替えてもらい、無料で料理を振る舞うように既に手配済だ」

 半年先まで予約があると噂のあるレストランを貸し切って貰っても良いものかと。

 子爵は要らぬ心配をしてしまったと絶句した。

 この話も伯爵家の財力と権力の大きさを実感した。余計な事は言わず子爵は全て従うことにした。


 バルトはラズリスをエスコートし、四阿に連れて行った。

 四阿からは噴水を挟んでレストランが見える。

 白い外観のレストランは周りの芝生や花に囲まれ、さらに噴水から出る水しぶきには小さな虹がかかっている。

 将来の夫となる人を目の前にしているのを忘れ、清々しい気持ちになり自然と笑みがもれる。


「レストランは気は入ってくれたのかな」

 ラズリスの笑みを見てそう言った。

「はい。とても美しいですね。お料理もとても美味しかったです」

「私もこのレストランは好きだ。よければ結婚式までにまた招待するよ」

 少し誇らしげにバルトは言った。

「楽しみにしております」

 ラズリスはバルトに対して良い印象を持った。

 まだ愛は解らないが、この人なら寄り添っていけるのではないかと思った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る