第7話 エトワール オデットを踊る資格

 最後の一段を上がり三階。

 すみれが階下を見つめる。美織みおりもすみれの目線の先を見る。


「この下に、ここのすべてのダンサーがいるの。ここが『エトワール』の場所。オデットを踊る資格があるバレリーナの場所よ」


 美織は初めて頂点に立つ意味がわかった気がした。


「あなたはここに立つ資格がある。あなたはここのバレエ団でオデットを踊る。だから、私はあなたをつれてきた」


 美織は涙が溢れた。最初は自分でも涙の理由がわからなかったが、ふと思うと、ここに来て初めて誰かに自分が認められた気がした。

 初めて自分がいるべき場所がわかった気がした。


 すみれが美織を見つめる。

「泣いているの?」

 美織は首を振り涙を拭く。

 すみれは微笑み、

「まだ泣くのは早いわ。これからいやというほど涙を流すんだから」

 そう言って先に進む。


 この階の神聖な空気はなんだろう。まるで空気が声をひそめている気がした。

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