第8話 神々が集まる場所

 すみれが稽古場の入り口の美しい扉を開けて入る。足が進まない美織みおりの手を取り微笑む。


「エトワールの部屋へ、ようこそ」


「おはようございます」

 後ろから小柄な女性が入ってきた。美織はその場に崩れそうになった。


 九条古都くじょうこと

 国際コンクールで一位に輝き、海外のバレエ学校に進学が決まっているダンサーだ。

 ここのバレエ学校でも彼女の噂で持ち切りだった。初めて間近で見る彼女は、思ったより小柄で華奢きゃしゃな女性だった。


「おはよ、すみれ」

 ちらっと美織の方を見て優しく微笑んだ。

「はじめまして、九条くじょうです」

京野美織きょうのみおりです」

「美織ちゃん、よろしくね」


 稽古場でストレッチを始める美織を見て、すみれが微笑みながら言う。

「あなたのこと美織みおりって呼んでいいかしら」

「はい」

「美織、体、硬いわよ。ちょっといいかしら」

 そう言ってストレッチのポイントを教えてくれた。

 すみれがサポートしてくれながら入念にストレッチをする。


 そこへ美織の同級生の優一がやって来た。

「おはよう」

「優一君。どうしてここに」

「すみれちゃんに連れてこられたの」

「す、すみれちゃん!」

「あ、僕の姉」

「ええ!」

 美織は驚いてすみれを見る。

「優一が美織ちゃんのこと好きだから一緒に練習したいって」

「え」

「そんなこと言ってないよ」

 慌てる優一。隣から古都ことが微笑みながら二人の顔を交互に見る。


 戸惑いながらも、どこか居心地のよさを感じた。

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