第14話 発表会に向けて

 今回の発表会で古都ことは『白鳥の湖』のオデットのヴァリエーション、すみれは『グラン・パ・クラシック』のヴァリエーションを踊る。

 古都ことがオデットの練習を始める。

 青葉あおばが鏡の前で練習を見ている。


 美織みおりがストレッチをしながら見ているとすみれが言う。

「あなたも覚えなさい」

「いいんですか」

 すみれが青葉の方に目線を向ける。微笑んで頷く青葉。


 美織は稽古場の隅で古都ことの踊りを見ながら振りを覚えようと踊っていた。

稽古が終わって、古都とすみれ、青葉まで美織のところにやってきて、まるで、美織がオデットを踊るダンサーであるかのように細かい表現や技術を丁寧に教えてくれた。

 美織にとって夢のようなひと時だった。


 それから毎日、すみれの厳しい練習が続く。何度も繰り返し練習するパ・ド・トロワ。空いた時間はストレッチ。古都が練習するときはオデット。


 パ・ド・トロワは順調に仕上がっていく。すみれの指導は日に日に厳しくなり難しい表現、テクニックが要求されるようになった。

 練習の中で美織が驚いたのは、すみれの表現力、技術の高さだった。一つ一つのポジション、テクニックが完璧に見えた。

 彼女が踊るとあらゆる踊りが、今まで美織が見た踊りと、まったく別物に見える。

 彼女の『グラン・パ・クラシック』には圧倒された。


 そして、発表会の通しのリハーサルの日がやってきた。

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