第6話 エトワールへの階段

 美織みおりは恐る恐るすみれについて行く。すみれは何事もないように階段を上がって行く。

 美織の足が止まった。バレエ教師からレッスン生は上に行ってはいけないと言われていた。

 二階はバレエ団員たちの稽古場だ。レッスン生が行っていい場所ではなかった。

 上がることを躊躇ちゅうちょしている美織に、すみれが振り返る。

「どうしたの?」

「階段を上がってはいけないと先生に言われてます」

「私が許すからついてきなさい」

「え、あなたは先生じゃないでしょう」


 溜息をつきながら、すみれが言う。

「いいから」

 その視線におののきながら、美織は階段を上がる。ドキドキした。


 二階。

 レッスン生とは違う雰囲気のバレリーナたちが美織に微笑みながら通り過ぎていく。


 すみれは、そのまま三階に向かっていく。

「大丈夫なんですか?」

「ん?」

「三階は何なんですか?」


 躊躇ちゅうちょして足が重くなる美織。

 すみれが階段を上り切り、後ろをついてくる美織を見下ろして言う。


「三階はバレエ団の主役級のバレリーナしか許されない場所よ」


 すみれが強い視線を美織に向ける。


「これは『エトワール』への階段。私のところまで上がってきなさい」

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