第11話 同級生たち

 一階の教室では同級生たちが発表会に向けて練習をしていた。佐由美の声が聞こえる。

「私は麗子ちゃんたちと四人で『四羽の白鳥』踊るのよ」


 美織みおりが教室に入って来ると全員の視線が集まった。

 佐由美が美織のところへやって来た。

「美織ちゃん、今頃何しに来たの」

 佐由美と仲のいい麗子もついて来る。

「そうよ。発表会の直前に戻ってきても出番なんてないんだから」

「美織ちゃん、すみれさんに習ってるって噂もあるけど、そんなの嘘よね。すみれさんは生徒なんか見ないんだから」

「そうよ。美織ちゃんみたいなヘタな人に教えないんだわ。すみれさんは古都ことさんよりすごいのよ」

「美織ちゃんは出番ないんだから帰りなさいよ」

 下を向く美織のところに康子が駆け寄ってくる。

「やめなさいよ」


 そこへバレエ教師の松野がやって来た。

「おはようございます」

 生徒たちが一斉に挨拶する。

「あら、美織さん。どうしたの?」

「先生、美織さんがレッスン受けるって言うんです」

「今頃、来たって発表会、間に合いませんよね」

 生徒たちが口々にいう。

 うつむいて泣きそうになる美織の顔を覗き込む松野。

「美織さん。すみれさんがずっと発表会のこと考えてくれてるみたいだけど、ここに来てていいの」


「すみれさんが……」

 美織は驚いて顔をあげた。

 そして、ほおをつたう涙を拭きながら教室を駆け出し三階に走って行った。

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