第87話「ジェミニ因子を宿す者!邂逅・大代有大!」
2023年 8月2日 22時30分
夕暮れ時ミレニアムクルーズが本州へ到着する。重症の奏者、抗者達治療に専念する者以外は各担当する地へと飛び地下アイドル達の動向を探るが地上アイドル達への叛逆を目論む地下アイドル集団は一人残らず完全に行方をくらませてしまっていた。
東京近辺を捜索していた達樹、光也、日向の三人は手当たり次第、聞き込みや散策をしたが手がかり一つ得る事はできなかった。
「……収穫はなかったか……今日は退こう。これ以上続けても無駄に体力を消耗するだけだ」
日向の提案に対して達樹が食い気味に声を荒げて主張する。
「待てよ!地下アイドルの奴らがいつ攻めてくるかわかんねぇんだろ!?それに隼人だって早く助け出さねぇと!!」
「冷静になれ。俺たちだけじゃない、日本中を何百人総出で探し回って全く進展がねぇんだ。このまま無策で下手に動き回ったって見つけれやしねぇよ」
「くっ……」
「焦る気持ちもわかるけど……今は明日に備えよう。それにまだ達樹君の力は不安定なはずだ。あんまり無理はしない方がいい」
日向の発言に達樹はぐうの音も出ず渋々受け入れる。
何より二人の言い分は正しい。そして何よりも想力を駆使して何時間も動き回ったツケが来てしまっていた。
以前とは異なり今は春風大我だけでなく灯野優菜も自らの内に宿してしまっている事から達樹の気力は限界に近く二人と共に帰路に着く。
「優菜ちゃんと一身になったから嫌でもわかるんだ。優菜ちゃんは隼人の事めちゃくちゃ心配してる。きっと俺達以上に……もっと自分に力があればって……後悔もしてる。それも凄く伝わってくる。だからこそ……やるせ無ぇ」
「あいつはそう簡単に自分を見失ったりはしねぇさ。それに万が一敵の手に落ちちまってたとしてもその時はぶん殴ってでも目覚まさせてやりゃいい。違うか?」
「……その通りだな」
達樹は気の焦りや不安から冷静さが欠けてしまっていた。光也の力強い言葉を聞き一息つけた事で落ち着きを取り戻す。
「隊長達も明日は集まって今後の動きについて協議するみたいだよ。今回の襲撃の件は勿論だけど、敵にDelightの手の内や機密事項が割れてる可能性が高いんだって」
「まじかよそれ!?」
「そもそも陽毬ちゃんの因子はこんな事態が起きた上でも敵の手に渡ることの無いように厳重な保管庫の中で管理されてたらしくて。その保管庫の解除コードを知ってる人間はごく一部に限られてる。それに加えてあからさまに隊長達に特化したあのアンチメタフィールドって奴も元はDelightの技術局が作った実験品を改変した物でなんで地下アイドル達が所持してるんだって話」
「相当きな臭ぇじゃねぇかそれ……」
「まぁその辺は俺達が考えてもどうしようもないよ。俺たちは
「あぁ……そうだな」
(何より想力の運用をコントロール出来るようにならないとダメだ……まだまだ力に振り回されちまってる。今朝の二人の力を上下に分ける感覚をもっと鮮明な物にしないとな)
――――――――――
2023年 8月3日 14時30分
午前9時過ぎに達樹は起床し準備が出来次第。光也、日向と合流し回り切っていない地下アイドル文化に特化した場所を手当たり次第捜索するもやはり敵の居所にまつわる情報は得られなかった。
三人はDelight本部へ一時帰還し昼食を取りながら情報をまとめていく事にする。
「当たり前だけど叛逆者に加担してる人達は少し前から居場所を暗ませてるな。元所属してたアイドルグループは辞めてるか、抜けずに仲間には何も言わず失踪してるかの二択だ」
「……一日経ってもこれと言った手がかりはどこからも届かない。やれる事は全部やってるはずなのに……一向に見つかる気がしねぇぞ!……ぐっ……!?」
突然激痛に襲われたかのように達樹はその場へ倒れ込む。達樹の内には二つのアイドル因子が同居している事から想力の暴走が起こり不規則なタイミングで宿主に負荷がかかってしまっていた。数十秒が経過し痛みも引いて達樹が一息つき立ち上がる。
「思ったより苦しそうだな……」
「心配かけてわりぃ……たまにグラッと来るんだ。マシにはなってる気がするんだけど」
「アイドル因子が二人……そういえば。ちょっと待て」
「?」
そう言うと光也は徐ろにスマホを取り出してある人物と連絡をとり始める。するとすぐに返事が来たようで達樹へ要件を伝える。
「ちょうど近くにいるみたいだ……ラッキーだな。黒髪の俺よかちょっと短いくらいのショートヘアの男。待ち合わせ場所はハチ公前な」
「なにが?」
「今のままじゃ地下アイドルの奴らと出くわしてもろくに戦えねぇだろ。今のお前と同じアイドル因子を二人分宿してる奴がそーいやいたなと思ってな。そいつにアドバイスでも聞けば少しはマシになるんじゃねーか?」
確かに今のままでは以前のような馴染みのある戦い方は出来ず安定した戦闘はままならない。
達樹は光也の好意に免じて素直に言うことを聞くことにする。
「わかった、ありがとう。ハチ公前だな」
達樹は光也達と一時離脱し光也が手配してくれたアイドル因子を二人宿していると言う奏者がいるハチ公前へと向かう。
――――――――――
ものの数分で達樹は渋谷へと到着。光也に言われた外見のに合致する男を探そうとした矢先同じ奏者衣装を身に纏う外見の一致する男に話しかけられる。
「あなたが光也が言ってた達樹君っすよね?」
「あぁ。そうだけどよくわかったな」
「アイドル因子を二人分感じたんで間違いないなと。光也から随分手こずってるって聞いてるっすよ」
『対憎愚特化戦力部隊 六番隊隊員「
「そうなんだよ。どうしても散漫になっちまって……いい感じの時もあるんだけど……後コンタクトも取りにくい気がする!」
「ふっふっふっ!そういう事ならこの
「ジェミニ因子?」
「詳しくは場所を変えてから話します。叛逆者達の件で緊急で休業になったライブハウスがあるのでそこに行きましょう」
こうして達樹はジェミニ因子を宿すと言う大代有大に連れられ渋谷区に所在地を置くライブハウス。渋谷 CLUB QUATTROへと向かう。
―――― to be continued ――――
アイドル・インシデント〜偶像慈変〜 朱鷺羽処理 @kareaman
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。アイドル・インシデント〜偶像慈変〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます