匂い。お酒の、作者さまの。


終始、お酒の匂い。

洒脱、洒落、ということばをつかいたいのに、全編全話がアルコールですから、困ります。酒、脱けてない。落ちてない。
それでも、つかう。

エッセイを拝読していると、このひとは好きだなあ、このひととごはん食べたいなあってなることがよく、あります。
が、暮らしたいなあ、ってなるのは、珍しい。
まあ惚れているのですね。

惚れるのは、空気をかんずるからです。
空気は、匂いを伴う。
終始、お酒の匂い。
終始、お酒の匂い。
わたしはきっと、騙されているのだろうと思います。お酒に。
終始、お酒の匂い。
お酒の。

わたしが止めるのもきかず、夜に出ていってほしい。
玄関で眠っているわたしを明け方に叩き起こして、ほら一緒にたべよって、くっちゃくちゃになった餃子、だしてほしい。
油と醤油だらけの手で、あたま、ぐしゃりってしてほしい。

鮮明な髑髏と、疾走する車両と、誰かのあたまをばちん叩いて、転がる酔漢をふみこえて。

……なにを書いてるんだろう、わたしは。

ああ、お酒のせい、か。
ならしかたない。

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