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概要
お姉ちゃんなの?
藍色の空が紫に変わっていく。そこから漆黒に染まる頃には星がゆったりと顔を出す。今夜の月は丸く、見上げた戦儀雨芽(そよぎあめ)は顔色をにごらせた。コートの襟を立てて視線を低くする。長い前髪と眼鏡で顔を隠すと早足に歩き始めた。まずい、まずい、まずい。こわばって足が縺れてしまう。不安からかポケットに突っ込んだ両手が小刻みに震えている。こんなことなら独りで外出するのではなかった。人通りの多いはずの道に出て辺りを見回すがこんな日に限って誰もいない。ああ、これは本当にまずい。まずい、まずい。雨芽は出来るだけ外灯のついた場所を選んで歩くも、ふと顔を上げたときにそれを見つけてしまった。 道の向こう側、真っ暗闇にぼんやりとわかる電柱の後ろ。白い顔がぷかりと浮かんでいる。それはゆっくりと這い出てくるように白を大
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