帰る場所

心も体もがんじがらめのままのハガネ。母が残してくれた癒しツバサに心を寄せていた。そんなある日、ハガネの心に触れる人が現れる。


『いいじゃん、ね？お婆ちゃんいないじゃん。』『･･･そうだけど。』どうやら女と男が話しているらしい。耳を澄ませていると畳を擦る音がした。少しだけ覗き込むと奥のほうでもそもそと人が動いている。視線の先に赤い服が畳の上に投げられた。細い腕に長い髪が揺れて女の背中が見える。その向こうから女の体を抱くようにして手が伸び、その肩越しに男の顔がこちらを見た。乱れた髪の奥で視線が合った気がしてハガネは体を隠した。