あゝ 堪らぬ、言語の福音。

検閲の事業化により、内務省の検査を経て帝國圖書館へ納本される出版物のうち、発禁処分を受けた書籍は地下の禁書庫に封印された。
その中に奪い取られた数巻が存在する。それらは嗜虐性に満ちたとされる本で
寄贈元は、奇妙な屋号の書肆グラン=ギニョヲル。

そこで男は出遭ってしまう「革命的美少年」に
焦がれ奮いたつ恋に、堕とされるのです。

陰影妖美に照らし出される、春本・エログロ・無惨絵、口にできない発禁本の数々
それら禁書の存在感に勝る登場人物たちが放つのは、品格ある恍惚をよぶ個性

「ほんの冗談で御座あます。正確には肉體の一部。後々、この左の眼を差し上げることが既に決まっておりますの」
須磨子は手にする肉叉(にくさ*)の先を偽眼いれめに寄せる。白銀色の鋭利な尖端が危うく突き刺さる程に近付け、不敵な咲えみを浮かべた。
-------©︎蝶番祭(てふつがひ・まつり)さま「書肆グラン=ギニョヲルの裏階段」より抜粋

清々しく言葉に文字に律されて脳裏にあふれまつらうのは、高級な耽溺へのいざない。
作者さまの知識の奥ふかさに、帝都の空気は今世に息をふき返します。

本棚にならぶ文学の名作の数々から、あふれだした言語の福音を貪り読んだ、あの日のときめきを
いま、エモく、浴びる
気持ちがよいですよ。


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