圧倒的な質感。無料で読むのが申し訳なく感じてしまう。

60年代当時のアメリカの生活なんて、一度も体験したことがないのに、懐かしさすら感じてしまうほどの圧倒的な質感があった。


虹乃ノランさんの作品は、その作中世界の住人から見えるなんでもない日常をすごく美しく描いていて、一文一文に魅了される。
主人公が見て、感じたこと、その細部の描写が丁寧で、とんでもなく感情移入してしまった。


全ての描写が見事の一言なんですが、そんな中でも戦場の描写は一体どこからそんな知識を得たのかと怖くなるほど。でも、参考文献を見て納得。質の高い作品は、作者の感性や文章力に加えて、知識も間違いなく必要なんだと改めて実感した。


温かい日常と戦地の落差や主人公の苦悩。決してライトとは言えない、読み応えのある一作で、それでも最後は前を向いて生きていくしかないと思わせてくれる。

ちなみに、同著者の『ベイビーちゃん』という作品も合わせて読むと、より作品を深く楽しむことができます。


本当に無料で読めてしまうのが申し訳ないレベルのクオリティです!

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