概要
「行きましょう、いけるところまで、御一緒に。命ある限り」
「美和ちゃん。美和ちゃんだろ? よかった助かった。とりあえずこの鎖、はずしてくれねぇかな?」
わたしを見上げながらそう言ったのは間違いなく金太郎《きんたろう》で、だけどその声は梅村《うめむら》さんのものだった。だから、わたしはぽかんと口をあけたきり、言葉を失った。多分仰天していたのだと思うけれど、なんだかのどかに驚いてしまって、悲鳴をあげそびれた。
同じアパートに住む年上の男性、梅村に想いを寄せていた美和だったが、梅村はある日脳卒中で返らぬ人になってしまった。ある夜、彼の遺した犬、金太郎の様子を伺いに行くと。なんと、金太郎の中に梅村の意識が入っていて……。
わたしを見上げながらそう言ったのは間違いなく金太郎《きんたろう》で、だけどその声は梅村《うめむら》さんのものだった。だから、わたしはぽかんと口をあけたきり、言葉を失った。多分仰天していたのだと思うけれど、なんだかのどかに驚いてしまって、悲鳴をあげそびれた。
同じアパートに住む年上の男性、梅村に想いを寄せていた美和だったが、梅村はある日脳卒中で返らぬ人になってしまった。ある夜、彼の遺した犬、金太郎の様子を伺いに行くと。なんと、金太郎の中に梅村の意識が入っていて……。