第10話 関係性と能力確認
目の前で火花を散らしているミネルヴァとマートリカー生徒会長、口には出さないが恐らく二人は知り合いなのだろう。
ただの知り合いではなく、『機械仕掛けの神々計画』を通じた……。
「秋人」
オーディンの声で我に返り「済まない、ちょっと考え事をしていた」と、曖昧な感じで誤魔化す。
「考え込むのも無理はない。じゃが、お主に合わせて行うから安心せい」
自分を安心させる言葉を投げかけて何もない空に、仮想ディスプレイが展開される。
自分の顔写真と一緒に世界巡りで会得した情報や使用していた武器……そして世界巡り中に死んだ回数と死因が簡潔に記されていた。
「お主の場合、死因は誰かを庇ってじゃな?」
「秋人らしいと言えばらしいね」
オーディン、ミネルヴァの発言に「死因は置いといて自分の魔力量ってどれくらいなんだ?」と、話題を変える。
「ふむ、魔力量は現代人基準で言えば多い方じゃ」
「こっち基準だと下の下ってとこか?」
魔力量の少なさに関しては諦めているので気にしていないのだが……。
「(さっきからやけに視線を感じるな)」
後ろからの痛々しい視線には触れずに「えっと属性魔法は……」と、感じで知らない方向で話を進めていく。
「基本となる魔法は一通り扱えるようじゃな?」
「得物は片手剣にナイフ、日本刀に回転式拳銃と自動拳銃と散弾銃……って何で比較的現代な代物も出てきてんだよ……」
所持履歴を確認をするとどうやら現代の並行世界に介入した際に入手したようだ。
「何だがゲームみたいだな……」
そんな呟きをよそに「秋人さん、あちらに練習用の的を用意しました。一通り魔法を試してみては如何でしょうか?」と、マートリカー生徒会長から提案される。
「そうですね、まずは試してみますか」
右手を伸ばして人生初(?)の魔法を起動させる。
「想像していたよりも魔法の起動難しいな……」
「最初はそういうものじゃ」
一通り扱える魔法を起動させてみた結果、起動から発動までにラグがある。
魔力量が少ないのとまだ完全に扱いきれていないのが原因らしい。
「もうちょっと試行錯誤したいが……」
時刻はお昼過ぎ、お腹が空いてきたので一旦ご飯休憩の流れを作る。
「オーディンと生徒会長さんは?」
多めに作っていたのでベンチの上に置いて尋ねるとやはり見た目で気になっている様子だったので一緒に食べる事になった。
「折角秋人と二人きりで食べれると思ったのに……」
「何か言ったか?」
別にぃ〜? と、ミネルヴァから返されてしまい「魔法に関しては反論の余地もないからあれだけど、ミネルヴァの魔法発動までのラグは?」と、尋ねる。
「一秒だよ。だけど上級者はコンマ何秒らしいけどね」
ジッとオーディンとマートリカー生徒会長を横目で見ているので言わんとしているが分かった。
「成程な? ってか、ミネルヴァと生徒会長さんは授業大丈夫なのかよ」
今更な質問に「問題ありません、校長からトレーニングが終わるまでは一緒に立ち会うように言われております。その間の授業も免除されています」「課題は終わらせてるから大丈夫」と、互いにちゃんとやるべき事と理由があるようなので、一安心する。
自分の為に貴重な時間を割いてしまっている事実に申し訳ないと思っているからだ。
「マートリカーは兎も角お主は甚だ疑問しかないのじゃがな?」
オーディンの言葉に睨みながら「主神様にそこまで疑われる筋合いは全く以て心当たりがありませんが?」と、返す。
「ところでミネルヴァ、この唐揚げの味はどうだ?」
「美味しい」
即答するミネルヴァに「なら良かった」と、返して強引に話を逸らさせる。ご飯を食べている時くらいはゆったりとした雰囲気で食べさせてくれと思いつつおにぎりを口に運ぶ。
「……」
昼ご飯を食べ終え、本格的な授業に入る前に装備一覧を眺めて実際に手に持ったりしていた。
「(重い……)」
日本刀と、一口に言っても種類は様々だ。
その中で自分が握っていたとされている刀の刀種は『打刀』と呼ばれる刀だ。
人の命を容易く奪うことが出来る武器にして一種の芸術作品の側面もある日本刀、現実ではショーガラス越しから見れなかった刀文を間近で、この目に焼き付けることが出来る。
この刀を握っていた自分はどんな想いを抱いて握り死んだのか……。
正直なところ、自分自身に興味がないが……少なくともこの刀に報いる戦いをするべきだと思っている。
「(っま、その前に身体の筋肉を増やしてまともに扱える状態にまでいかないと話にならないからな……)」
いつテュポンが出現するのかはオーディンやアテナ神ですら分からないという有り様。
血反吐を吐いてでも目の前の事に挑むしかないと決意し打刀を鞘に収める。
「秋人」
後ろから呼ばれて振り返るとミネルヴァがこちらに近づいてくる。
「どうした?」
あっちから話しかけたのにミネルヴァはモジモジさせながら「あ、秋人って……」と、気になる所で言葉を区切る。
「? 言いたいことがあるならはっきりと言ってくれ、エスパーじゃないんだから」
「や、やっぱり後で話す!」
そう言って立ち去るのかと思ったら一旦立ち止まり自分の傍まで近づき「大事な話だから逃げないでね」と、背伸びしてまで自分の耳元で囁いた。
恥ずかしかったのか逃げる様に走り去ったミネルヴァの後ろ姿を見届けて一言。
「やっぱり女心は分からんな……」
そんな秋人をよそに視線を交わすミネルヴァとマートリカー。
互いの目つきと視線はある意味では獲物の奪い合いにも似ていた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます