第9話 神々育成校へ
二日後、自分は神々育成校へ向かう乗り合い馬車に揺られていた。
理由は言わずもがなオーディンによる対テュポン用特別授業とトレーニングが行われるからだ。
山の中腹辺りに神々育成校とその関連施設が存在しており、乗合馬車やロープウェイ、後は箒による飛行魔法だ。
だが生憎自分は某猫型ロボットよろしく簡単に空を自由に飛べないしそういった魔法も持ち合わせていない。
そして手持ちのドラクマも心ともないので、一番安価で約束の時間に間に合う乗合馬車を選択したのだ。
「そろそろか……」
馬車に揺られること二十分、目的地である神々育成校の正門に到着した。
代金を支払い去っていく馬車の背を一瞥して正門をくぐる。
さてはて、指定された第四運動場はどの辺りか案内板を見ようとしていた自分に「ちょっとちょっと駄目でしょ部外者が勝手に入っちゃー」と、言われる。
いやいや、だったらちゃんと正門に立っとれよと言いたい気持ちを抑えて「失礼しました。ですが、オーディン様から神々育成校の第四運動場に来るように言われておりまして」と、謝罪をしつつも事情を説明する。
しかし警備員と思われる男には「そんな話聞いてないから、ほら帰った帰った」と、追い返されそうになる。
「いやいや、オーディン様から連絡があったかと思うので確認してもらえれば」
「そう言って不法侵入する気でしょ? このまま帰らなければ無理矢理にでも追い出さなければいけなくなるんだけど……良いんだな?」
問いかけの後に腰にかけていたサーベルの柄に手をかける。
おいおい勘弁してくれと思ってても事態の解決にはならない。
暖簾の腕押しな状況に「どうかされましたか?」と、第三者の声が割り込む。
『本日、オーディン様のお客様が来られる。第四運動場まで案内を頼むよ』
校長からの頼みを受けて私『マートリカー』は少し早めに正門まで廊下を歩く。
「(オーディン様のお客様は極東の顔立ちをした方……どういった関係なのでしょうか?)」
様々な考えが頭の中で浮かんでは泡が弾ける様に消えるのを繰り返していると建物の出入口に到着していた。
外で待つことにした私は正門付近で諍いが起きているのに気付き現場に近づく。
「どうかされましたか?」
片方は仕事に少々問題がある警備員でもう片方は初めてお会いする極東の男性。
「これはこれはマートリカー生徒会長!」
警備員は私の名を口にしてあれこれ説明しますが、乱雑な説明で理解に苦しんでいる私に「オーディン様に本日第四運動場に来るように言われて来たのですが、この警備員からそんな話は聞いていないと門前払いされていまして……今すぐ出ていかなければ実力行使に出ると言われたのです」と、男性の説明で私は彼がオーディン様のお客様であると理解しました。
「大変失礼いたしました。オーディン様が第四運動場でお待ちしております」
深々と頭を下げて謝罪をする私に「えっと、マートリカーさんでしたっけ? まずは顔をあげて下さい」と、困惑が入り混じった声を聞いて下げていた顔をあげる。
「えっと第一に自分としてはそこまで怒ってなくてですね……。時間もないので現場に行きましょう」
これ以上面倒事がごめんだと、肩から見え隠れする本音を察して「ご配慮ありがとうございます」と、感謝の言葉を伝えて警備員の方を見る。
「今回の件に関して後ほど然るべき対応がされます。では」
待って下さいと必死に私を引き留めようとする警備員を無視して私はお客様と一緒に校内へと入る。
「では秋人様はあの世界巡りを有している方なのですね?」
「らしいのですが、どうも実感がなくてですね……。後、様付けする必要はないですよ」
廊下を歩きながら軽く自己紹介を済ませて秋人さま……秋人さんの話を聞いていました。
「ご謙遜なされる事はありませんよ? 前の持ち主は秋人さんの世界では百十年前……、『第一次世界大戦』次に生きておられた方になります」
私の説明を聞いて「じゃあその前の持ち主は?」との質問に「一気に時代を遡りまして紀元前となります」と、答える。
「一気に遡ったな……」
「そして最初の方がギリシャに住んでいた方と書物には記されております。これまで詳細は不明で神々も能力の詳細を把握しきれていませんでした」
「そこに自分が現れたと」
秋人さんのお言葉に頷き「秋人さんが行った世界巡りの影響は大なり小なりありました。しかし、その行為全てが悪であると私は言いません」と、自身の考えを口にする。
「記憶にないので何とも言えないですね」
会話もそこそこに目的地の第四運動場へ到着するとオーディン様のお姿と……。
「おや、誰かと思いましたら問題児のミネルヴァさんではありませんか?」
「優等生で生徒会長のマートリカー先輩じゃーありませんか?」
今最も会いたくない人物が居ることは想定外でした。
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