第10話(童話)星飼い
夜空にある多すぎる星を少しずつとるのが俺の仕事だ。
星は多い方が地上の人間にとってはいいらしいが、星は最小限のスペースがないと、段々と輝きが弱まってくる。それらを阻止するために、星狩りの仕事はある。でも、一部の団体からは抗議文が送られてくる。
ちなみに狩るのは長いこと住んでいる星から。
十分地上の人間を楽しませただろという理由で。リストがあって、新しく加わった星の登録もかねて狩りを行っている。
一方では新しい手続きをし、一方では最後の手続きを行う。
狩った星は粉砕して天候の力を借りて、地上に返す。雨や雪に混ぜ少しずつ地上に降らせ、海に漂わせ、いつしか砂浜にたどり着く。よくある星の砂の完成ってわけ。
そんな風に俺の仕事は成り立っている。中々毎日気苦労が多くて敵わない。
そんな俺がまだ若くて少しばかり角が立っていた頃の話。
その日は特に苛立っていた。その数日前に抗議団体からの抗議文により、上司から怒られたからだ。まぁ、お叱りといっても形だけ。一応のパフォーマンスも抗議団体との折り合いに必要。この仕事に就く前に嫌というほど聞かされた話で、頭では分かっていてもむしゃくしゃしていた。一部には分からず屋がいて嫌になる。それで数日の登録や狩りも少しばかり雑になっていた。ピーピー喚く星にもぶっきらぼうに―狩るぞ―と脅して静かにさせた。本当は星に対しては暴言を吐いてはいけない。その後の輝きに影響するからだ。そんな折、珍しく喚いていないすごくぼんやりとした星がいた。リストに登録されていないことを確認して近づき面倒くさそうに聞いた。
―新入りかい?―
するとその星はぼんやりと見上げてゆっくりと言った。
―そうです。これからよろしくお願いします―
今までのイライラを吹き飛ばすかのような物言いに拍子抜けした。
―ずいぶん大人しいだな。珍しいタイプだよあんた―
リストから顔をあげて俺は少し興味を持って話しかけた。
―そうですか。ちなみにここは不人気ですか?人気ですか?―
―まぁまぁ平均より長めかな。ガッカリしたかい?―
―少しばかりですが。まぁ他にも仲間がいるのならば心強いですね―
星はゆったりと答えた。
―やっぱ変わってるわあんた。普通はもっと長生きできる場所をって喚くぜ―
―そーですねー。長生きできるのにこしたことはないんですけれど。ところで星狩りさんはなんだか少し寂しそうですね。何かありましたか?―
星にこんな風に尋ねられるのは初めての事だったので戸惑った。
―へっ?あ、いやぁ。少し怒られて。ってやっぱあんた珍しいわ。普通は自分のことで精一杯だろう。俺のことを気に掛けるなんて―
―いやいや。これから何度かお世話になるし、きっと最後もお世話になる方だと思ったので―
あんまりにも優しそうに言うもんだから不覚にもその場にへたり込んでしまった。
―大丈夫ですか?星狩りなんてあんまり楽しくないですよね。でも最後は綺麗に終わりたいのでそれまでよろしく頼みます。友達として―
その言葉が後押しして、俺はじんわりと体が温まっていくのを感じた。
―星にそんなこと言われたのも初めてだ。こちらこそよろしく頼む。ちなみに登録名はどうする?―
その星はほっとした感じで、少し考えて言った。
―フォートでお願いします。―
―いい名だな。きっと柔らかい光を出すんだろうな―
―そう言っていただけると嬉しいですねぇ―
そこからフォートとはしばしば会いに行って話をした。フォートが最後の時も本当は担当から外れていたが、無理を言ってやらせてもらった。
フォートの最後は初めて会った時と同様、穏やかだったよ。
そんなこともあってから、何か反発心があっても奴を思い出すようにしてんだ。心がな、ほんわかして少し余裕が出るんだよ。
あ、また新しい星がいるわ。じゃあ。
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