第13話(童話)プールの時間

ブクブクブク、ブクブクブク

カスミちゃんはお風呂の中で水に顔をつける練習をしています。

洗面器にお水を張って、1分間顔を上げずに出来るかの練習中です。クラスの中でいまだに泳げないでいます。他の友達はスイスイとプールの中央まで進んで遊んでいます。その間、カスミちゃんは一人でプールのへりにつかまって、先生に指導してもらっています。本当は早くみんなと同じように遊びたいのに。

ブクブクブクと30秒もたたないうちに顔をあげました。

「あとこの半分がんばりましょうね、カスミ。」

お母さんが優しく言います。

あと半分、あと半分。そんなの息が出来なくてしんじゃう。カスミはお母さんの顔から目をそらし、下を向きました。水中で息をはき続けるのが難しいのです。すぐに口の中にためた空気を初めにゴボボボとはき出してしまって、いつも最後の方は顔が真っ赤かになるまでがまんしています。

「みんなはどうやって息を持たせているの?」

カスミちゃんはお母さんにききます。

「あせらないことよ、カスミ。水の中は怖くないのよ。」

カスミちゃんの頭を優しくなでながらお母さんは言います。

そんなのわかんないよ。といじけた気持ちでカスミちゃんはお風呂場から出ました。

 ある日のプールの時間、友達のスミカちゃんが寄ってきました。突然のことにカスミちゃんがとまどっていると、スミカちゃんは口笛をふくみたいに息をはいたら上手に出来るよ、と教えてくれました。ただ残念なことにカスミちゃんは口笛が出来ません。口笛って?という返しをすると、スミカちゃんがタコのお口にしてと言ったのでその通りにしました。そしてそのままで息をはくの、と教えてくれました。早速水の中に顔をつけて、たこの口にして息をはくと今までと違って、はじめに空気を大量にはきだすことはふせげました。そのまま頑張ってみると、なんと今まで出来なかった1分がいつの間にか過ぎていました。

先生はカスミちゃんに合格を言って、去っていきました。カスミはスミカちゃんに向かって、

「ありがとう。」

と言いました。するとスミカちゃんはカスミちゃんを手招きして、みんなが待っているプールの真ん中まで呼びました。これでカスミちゃんもみんなと同じように遊ぶことが出来ました。

その後、カスミはもっとかんたんな息の吐き方を覚えて、水泳が大好きになりました。

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