第4話(童話)ありがとう
あるところにお母さんと女の子がいました。女の子はお母さんに、
「うれしいことをして貰った時は、ありがとうって言うのよ」
と教えられました。
「うん!」
女の子は元気いっぱいにそう答えました。
ある日女の子が散歩している時、一匹の猫が女の子の前を通りがかりました。その猫がひょいと塀の上を歩いていくので、女の子も猫の後ろをついて歩きました。道路の先にかかったところで、猫が道に降りてきて女の子の前にどでんと居座りました。女の子はビックリしつつも、猫を撫でました。その時です、道路からゴオオという音と共にトラックが飛び出してきました。女の子は道路を渡らなくて良かったと思ったと同時に、猫に助けられたんだと思い、猫に対して、
「ありがとう。猫さん」
と声をかけました。その言葉に猫はわかっているのかどうか、ニャアオと間延びした声で応えました。
また別の日です。女の子が散歩をしていると、空高くに鳥が飛んでいました。女の子は鳥を見ながら、鳥の下を歩いて行きました。坂道になっている道路が見えた時です。鳥が旋回し、急降下しました。女の子の前にちょこんと道の上に止まりました。女の子はビックリしつつも、鳥さんこんにちはと声をかけて鳥をなでようとしました。その時です、坂の上からピュウウという音と共に自転車が走り去っていきました。女の子は道を渡らなくて良かったと思ったと同時に、鳥が助けてくれたんだと思い、
「鳥さん、ありがとう」
と言いました。鳥はその言葉を聞いて、クイと頭をあげて飛び去りました。何回か女の子の頭上を旋回してから、遠くの方に飛んで行ってしまいました。
また別の日です。女の子が散歩をしていると、公園の方から何人かの声が聞こえてきました。見ると男の子や女の子が4,5人いて、みんなでボール遊びをしていました。女の子がそれを見ていたら、女の子の方にボールが飛んできました。女の子はボールを拾い、ボールを追いかけてきた男の子に渡しました。ありがとうと男の子は言いつつ、もし良かったら一緒に遊ばないかと提案してくれました。女の子は嬉しくなって、うんと力いっぱい答えてみんなの輪の中に入りました。その時です、女の子の後ろに居た大きな大きな男がチッと舌打ちをして回れ右をして帰っていきました。女の子もみんなも気がつかないで、ボール遊びに夢中になりました。日が暮れるころ、女の子はみんなに向かって言いました。
「今日は遊んでくれてありがとう。とっても楽しかったわ」
みんなも口々にお礼を言って、その場を離れました。
女の子はその日あったことをお母さんに話して、毎日「ありがとう」を言えたよと報告するのでした。
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