第15話(絵本)泳げないペンギン

そのペンギンは、いつも崖の下を覗き込んでいました。


海の中には、ペンギンの仲間が優雅に泳いでいました。


「早くお前も来いよ!」


「怖がるなよ!すぐに泳げるさ!」


「大丈夫だって。」


仲間は初めの頃は、口々にペンギンを励ましていました。


それでもペンギンは、なかなか、

あと一歩が踏み出せませんでした。


次第に仲間たちも、泳がないペンギンをバカにし始めました。


「このウスノロマ!」


「臆病者!」


「こんなことも出来ないのかよ!」


ペンギンはそう言われても、何も返しませんでした。


その内に誰も何も言わなくなりました。


誘いにも来ないし


罵りにも来ない


他のペンギンたちは、愛想を尽かしたのでした。


そのことをペンギンも分かってはいましたが、

何も行動を起こしませんでした。


そんなある日、新しいペンギンが

同じように崖の上に立っているのを

ペンギンは見つけました。


そのペンギンのことを

遠くから眺めていました。


どんな子なんだろう


何をしているんだろう?


ペンギンがそう思っていたら、

別のペンギンたちが話しかけに行きました


でも、話が成り立たなかったのか、

話しかけに行ったペンギンたちは、

怒って帰っていきました。


その事が不思議に思われて、

意を決して、ペンギンは話しかけに行きました。


「こんにちは。」


ペンギンがそう言うと、

新しいペンギンは、チラリと顔を振り向いて、


「こんにちは。」

と返しました。


その事を嬉しく感じたペンギンは、


「どうしてここに居るの?」


と思い切って聞いてみました。


すると、聞かれたペンギンは、


「泳ぎたいけれど、コワイの。」


と返しました。


「僕もだよ。」


そう答えると、新しいペンギンは、


「そう。」


と少し悲しそうに答えました。


ペンギンは、


「一緒に頑張って泳がない?僕も怖いけれど

頑張ってみようと思う。」


と提案してみました。


言われたペンギンは、

少しだけ考え込んでから、

コクリと頷きました。


二匹は、いきなり崖から飛び込むのは

無理だからと、

近くの氷の上から飛び込む練習をしたり、

氷の地面と海の境目で、

顔をつける練習をしました。


初めは二匹のことをバカにしていた

周りのペンギンたちも、

次第に二匹の真剣な様子に、

アドバイスをしてくれました。


ある日のことです。


二匹はあの崖の上に立っていました。


下の海には、仲間たちが見守っています。


「僕からいくね。」


ペンギンがそう言って、

勇気を出して飛び込みました。


冷たい海の水が全身を包み込み、

ドキリとしたけれど、

スイッと踊りました。


そんな様子を見て、

新しいペンギンも飛び込みました。


同じように海の中でスイスイッと

踊るように泳ぎました。


陸に上がってから、

他のペンギンたちは二匹を褒め称えました。


二匹も互いに照れながら、喜びました。





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