第2話 サイトウ、換気する
「んぅ……。 ふごぉ!? ぉ……? あぇ……? 」
ガキの頃から変わらない寝相の悪さで、ベッドからずり落ちそうになり意識が覚醒する。
どうやら、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
(助かった……のか? )
てっきりジョブチェンジに失敗しとんでもない事故に巻き込まれたのではとヒヤヒヤしていたが、なんとか死なずに済んだみたいだ。
「あーっ、ビックリしたぜぇ~! まったく、ジョブチェンジでこんなことになるなんて聞いたことな――
(ん”!? )
「えっ!? ちょっ! な、なんだよコレ!? 」
無事に生きてててよかった……っとホッとしたのも束の間。
自分の口から飛び出でた少女のような声に腰を抜かす。
いや、おかしいのは声だけではない。
慌てて視線を落とし、カラダに起きた変化を確認すれば。
ごつごつとしたおっさん肌は、もちすべの白肌に。
ガッシリとした手足は小さく細くスラリとしたものに変化していた。
(あばばばば。 お、おお。 落ち着け俺……! )
ここは以前と変わりない、平た…もとい慎ましやかな胸に手を当てひーふーと深呼吸をする。
「う゛!? ぐ、臭ぁ!? 」
体が変化したことで嗅覚まで変わってしまったのか。
ついさっきまでは何ともなかった部屋の匂いが、やけに気になり思わず
(と、とりあえず換気だ換気……! )
「ふぃ~」
(涼しい夜風のおかげで、さっきよりはマシになったな)
寝転がっていたベッドや、鎧掛けに吊られた防具からはまだイヤな臭いがしてくるが。
洗い置きのシャツだけ羽織り、窓を全開にしたおかげで部屋全体の空気はだいぶ良くなった。
「はぁ……」
(とはいえ、今起きている一番の問題は何も解決しちゃいないんだよな……)
洗面所に備え付けられた鏡に映る自分の姿に目をやれば、黒目黒髪無精ひげのおっさんはどこへやら。
炎のような赤い頭髪に琥珀を思わせる橙色の瞳。
もはやその外見から、生まれ育った東国の血は感じられない。
妖精のごとき美少女が佇んでいた。
「……」
この身に起きたあまりの変化を受け止め切れず、鏡の前でしばらく茫然としていると。
コンコン、コンコンコン、ドンドン、ドンドンドンドンと。
次第に大きくなっているノック音に気付いた。
「ちょっと! 大丈夫なの~!? おーい! 聞こえてるなら返事しなさいよ~!! 」
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