第11話 サイトウ、大誤算

 メイジは、いわゆる魔法と呼ばれる類のマジックスキルを扱う第一階層のジョブだ。


 第一階層に分類されるジョブはメイジの他にもファイターやシールダー、アーチャー、シーフなど多岐にわたり。


 戦闘ジョブを除くとクラフターやコレクターが有名どころだろう。


 第一階層ジョブは様々な上位ジョブにランクアップする可能性を秘めており。


 ランクアップの回数に応じて第二階層ジョブ、第三階層ジョブとグループ分けされていく。


 つまり、第一階層に分類されるメイジはファイターと同じくジョブのスタート地点というわけだ。


(メイジ……。 このジョブを引けたのは”予想外”だが、かなりのアタリだぞ)


 当然、ファイターをはじめとする他のジョブも上位ジョブにランクアップすればどれも優秀なのだが。


 こと第一階層に限っていえば、最も多くの属性攻撃をマジックウェポンや特殊なアイテムに頼らず扱えるメイジは他のジョブにはないアドバンテージがある。


 属性攻撃は敵の耐性によって効果が増減するが、弱点を突ければ格上の相手にも大ダメージを与えることが出来るのだ。


(俺がどの程度魔力適性を持っているかはまだ謎だが。 メイジというジョブのポテンシャルを上手く発揮できれば今の位置Dランクから這い上がれるかもしれない……! )






「それで、どうだったのよ? 結局ジョブは何になったの? 」


 冒険者協会支部からの帰り道。


 ここまで、色々と付き合ってくれたヒメカがそう尋ねてきた。


「ジョブは、メイジになった」


「それは……意外ね。 ジョブチェンジ前はファイターだって言ってたから。 てっきり、ファイターと同じ武技系のジョブに成ると思っていたわ」


「ああ実際、俺もそう思ってたしな」


 武器を用いたウェポンスキルを主軸に戦うファイターやアーチャーは武技系と呼ばれ、魔具を用いたマジックスキルを主軸に戦うヒーラーやメイジは魔法系と呼ばれている。


 ウェポンスキルを発動する場合、闘気と呼ばれるエネルギーが必要になり。


 マジックスキルの発動には魔力と呼ばれるエネルギーが必要になる。


 一般的にあらゆる人族は、生まれながら魔力と闘気の両方を持ち合わせているが。


 どちらか一方のエネルギーの扱いに長け、もう一方の扱いが苦手な場合が多いとされている。


 ちなみにこの得意不得意は俺ら古住人族やエルフ人族・竜人族など種族によって多少偏りがあるらしい。


「個人的には、ファイターからメイジに成れて嬉しかったぜ」


「ふーん、そう。 嬉しいっていう割には、なんだか難しい顔をしてるように見えるけど? 」


「まあ、な。 自分の魔力適正が分からない以上、不安もある」


「そのあたりは実戦で確かめていくしかないものね」


「だな」


「……」


「……」


「ヒメカ」


「なによ」


「今日はその、一日中俺に付き合ってくれてありがとな。 すぐにってのは無理そうだが、このカラダに慣れてって冒険者としての活動が軌道に乗ったら。 後日また改めて、ちゃんと礼をさせてくれ」


「えっ……? ちょ、ちょっと」


「……? 」


「貴女もしかして、明日からはまた冒険者として一人で活動しようなんて思ってるんじゃないでしょうね……? 」


「ん……まあ、そのつもりだぞ? 冒険者情報の更新も済んだし、いつまでもヒメカの世話になるわけにはいかないからな」


「はあ……そうだったわ……。 この娘、中身はおっさん冒険者なんだった……」


「な、なんだよその呆れた顔は」


「いい? サイトウちゃんっ。 今まではおっさんだったから、ソロで活動したり人手が居る時は募集をかけて簡易パーティーを編成するんで問題なかったでしょうけど。 女性冒険者の場合、トラブルを避けるため友達や恋人とかと固定のパーティーを組んでおくのが常識なのっ」


「ま、マジで……? 」


「マジよマジ! サイトウちゃんみたいな娘が一人で活動してたら、絶対変なのに目を付けられるわよっ」


「おっさんなのにか!? 」


「貴女を見ておっさんだと思う人はもう誰もいないわよ……」


「うぐぅ……! 」


「ふんっ、と・に・か・く! このままだとサイトウちゃん、冒険者としてまともに活動できなくなっちゃうでしょうし……。 ひ、ヒメカのパーティーに入れてあげるわよっ」


「……! それは……! 嬉しい誘いだが、いきなり俺なんかが入っていいのか? 」


「昨日の晩にはもう、パーティーメンバーの娘に連絡して了承して貰ってるわ。 言ったでしょ、私が力を貸してあげるって」


「ヒメカ……」


「だから、ヒメカたちの仲間になるかは貴女の選択次第。 どうするの、サイトウちゃん? 」


「俺は――

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