第10話 サイトウ、新たなジョブ

 何か大切なものを失った気がするものの、どうにか服と下着を手に入れた俺たちは一度ホテルに戻った後。


 当初の予定通り、冒険者協会支部を訪れていた。


「今回のサイトウさんの事例は歴史的に見てもかなり珍しいものなので、こういう言い方はなんですが恐らく職能管理院の研究対象になると思います」


「け、研究対象!? 」


 俺がまだおっさんだった時からの顔馴染みである受付嬢、フウカさんの口から飛び出した衝撃的な言葉に椅子からずり落ちそうになる。


「もちろん、この国では本人の意思が尊重されるので研究に協力するかは任意ですが……研究に協力した場合それ相応の報酬が支払われると聞いています」


「報酬……ごくり」


「ちょ、ちょと……! 報酬に釣られちゃダメじゃないっ、もうっ」


「ふふっ、研究といっても。 精密検査やジョブ能力のテストなどを定期的に受けてもらう程度なので、研究所に閉じ込められるようなことはないから安心していいですよ」


「そ、そうなの……ヒメカてっきり……」


「まったく、一体どんなことされると思ってたんだよ」


「そういうサイトウちゃんだってほっとした顔してたじゃない」


「まあまあ、お二人とも。 研究対象だなんて聞いたら、よくない想像をしてしまう気持ちも分かります。 とはいえ、職能管理院の件は後日また改めてサイトウさんにご連絡させていただく形になりますので。 詳しい話はその時に」


「分かりました」


「慎重に考えなさいよっ」


「お、おうっ」


「それでは、次に。 再検査を行ったジョブの結果や変化してしまった性別などを含め。 サイトウさんの冒険者パスを作り直しましたのでこちらをご確認ください」


 フウカさんから手渡された真新しい冒険者パスの表面に掌を置き、ロックを解除する。


 ▽▽▽▽▽


 公開情報


 登録名 サイトウ 本名 ■■■■


 年齢 ■■


 性別 女


 冒険者ランク D


 職能 メイジ


 △△△△△


 生涯に一度のジョブチェンジにより得た新たなジョブは、ファイターとは真逆の魔法系戦闘ジョブ。


 メイジだった。

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