第15話 サイトウ、オレっ娘になる
「それじゃあそろそろ、今日の行先を決めましょうか」
ポツったーのプロフィールを再編集し終えたところで、ヒメカがそう話を切り出した。
俺たち冒険者の主な仕事は世界各地に数えきれないほどある危険と財宝に満ちた場所、通称ダンジョンを探索しモンスターを倒したり宝箱を開けることで手に入るアイテムを回収したり。
ダンジョン内で採掘・採集できる鉱石や植物を持ち帰る事だ。
また、Aランク以上の冒険者になるとダンジョンとは別にワールドゲートと呼ばれる巨大な門への立ち入りが許可される。
ワールドゲートは現在確認されているだけで世界に二十四個あり、それぞれのゲートが異なる世界に繋がっているのだが。
そんなワールドゲートの向こう側を開拓するのも、冒険者の仕事の一つなのだ。
「サイトウちゃんはジョブチェンジしたばっかしだし、今日は難易度の低いダンジョンにするのにゃ」
「そうしてもらえると助かるぜ」
「ぜ? 」
「あっ……」
「にゃふふ、だいぶ素が出てきたにゃ。 昨日もいったけど、仲間なんだしもっと自然体でいいのにゃよ? 」
「サイトウちゃん、ちょっと……こっち」
「……? 」
ヒメカにくいくいと袖を引かれたので近づくと、小声でそっと耳打ちをしてきた。
「……この間はああいったけど。 元男だってバレなければ、無理してキャラをつくるよりタマネの言うように自然体でいた方がいいかもしれないわ」
「そう、だよな……うんっ」
「お~い! 二人で何コソコソ話してるのにゃ~?? 」
(本当はタマネにも隠し事はしたくないけど……)
受付嬢のフウカさんにも忠告されたように、トラブルを避けるためにも家族や親しい友人など元の俺を知る人以外には極力元男であることをバラさないほうがいいのは理解していた。
「いや、タマネの言う通り。 これからはもっと、素のオレを出していこうと思ってさ」
「にゃ!? サイトウちゃんオレっ娘だったのにゃ!? 」
「おうっ。 へ、変……かな? 」
「ぜんぜんそんなことないにゃ! アタシだってにゃーにゃー言ってる猫っ娘だしにゃ」
「むー、そうなるとヒメカだけパンチが弱い気がするわね……」
「ヒメちも十分個性的にゃ。 ピンクで、ツインテールにゃし」
「ありがとう……って、それ全部髪型のことじゃないっ! 」
「にゃははは、バレたにゃ」
「もうっ。 話が脱線しちゃったけど、どのダンジョンに行くか決めましょうっ」
「うにゃにゃっ! そうだったにゃ……! 」
「この時間からだと、そうだな……。 あのダンジョンなんかいいんじゃないか? 」
「にゃう? 」
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