おっさん冒険者の俺氏、人生逆転を賭けジョブチェンジするも性別までチェンジされる

猫鍋まるい

第1章 爆誕のサイトウちゃん 編

第1話 サイトウ、ジョブチェンジする

(人生一度きりのチャンス、こいつに大金を注ぎ込んだんだ。 マジで頼むぞっ……! )


 冒険者協会が提供する格安ホテルの一室。


 パンツ一丁の怪しいおっさん……もとい万年D級冒険者のサイトウは。


 両手で握りしめた石ころに額を擦り付けながら一世一代の賭けに出ようとしていた。


(俺のやっすい稼ぎからこの石ころ代を捻出するのに、半年以上も掛ったんだ……! これでいいジョブに成れなかったらマジでへこむぜ……)


 卵のようにすべすべとしたこの”ジョブチェンジの石”に願えば生涯に一度だけ生まれながらにして魂に刻まれている職能、即ちジョブを書き変える事が出来る。


 俺は様々な戦闘ジョブにランクアップする可能性を秘めたファイターの職能を授かりながら、三十代の半ばを過ぎた今に至るまで一度も上位ジョブにランクアップすることが出来ず。


 十代二十代と無茶した反動か、色々とガタがき始めた今の体では基礎ランクの戦闘スキルしか習得できないファイターで冒険者を続けていくことに限界を感じていた。


(ここで区切りをつけて、冒険者を辞めちまうって選択も出来るが……)


 実際、俺が思い悩んでいたとき数少ない友人が冒険者以外の仕事を紹介してくれたこともあったが…。


(それでも)


 ガキの頃、テレビでみた伝説の冒険者たち。


 強大な怪物を打ち倒し、人類史に残るような財宝を手に入れた彼らの輝きが俺の胸を熱くした。


 いつか自分もああなりたい、歴史に名を刻む冒険者になってやると。


(我ながら諦めが悪いと思うが……)


 まだ、夢は捨てたくなかった。


「よし! いっちょやってみるか! 」


 掌にある石ころに願いを込める。


「ジョブチェンジ! 世界よ、我が職能を書き換えたまえ! 」


 一度きりの願いを叫べば、ジョブチェンジの石が強く輝きだした。


「うお!? なっ、なんじゃぁぁぁ!!!? 」


 直視できない程強い光に呑まれ、全身が熱を待ち始める。


(体がッ焼けるように熱い……! )


 全身に火が付いたような熱さと痛み。


 次第に景色が揺らいでいき、バチバチと光が散り始める。


(クソ……意識がもたねぇ……)


 視界が黒く染まりはじめ、深い闇へと沈んでいく。


(嘘だろ……こんな……)


 ジョブチェンジで死んじまうなんて……。


「笑えねぇぜ……」

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