第6話 サイトウ、ローブを入手する
「それじゃあ、じっとしててね」
「お、おう」
服を買いに行く前にサイズを測るからといわれ、白い壁の前に立たされた。
「この枠に納めて……ほいっと」
可愛らしくデコレーションされたヒメカのスマホがピコンと鳴り、写真を撮られたのだと気付く。
「ちょ、サイズを測るんじゃなかったのかよ」
「知らないの? ZAKUZAKUのアプリを使えば写真を撮るだけで自分に合った服のサイズが分かるのよ」
「ほえーマジかよ……未来すぎるだろ」
「未来って、このアプリが出たの随分前よ」
ZAKUZAKUは服の他にもジムの経営やスポーツカーの開発など幅広く展開している企業で、社長が日本人なこともあり社名はローマ字読みでザクザクというらしい。
(そういえば前に、ZAKUZAKUの社長が宇宙にパン屋を開くとか言い出して話題になってたな…)
あの計画は果たしてどうなったのだろうか。
「それじゃあ、サイズも測れたし。 出かける前に、これに着替えて頂戴」
「これは? 」
「コモン品のローブよ。 これならサイズも気にしなくていいし、さっきホテルの近くのアーマーショップで受け取ってきたのよ」
「わざわざ買ってきてくれたのか。 ありがとう、幾らだった? 」
カバンから財布を取り出し立て替えてもらった分を払おうとするも、ヒメカがそれを手で制した。
「受け取ったっていったでしょ? これ、ポツったーで今やってるリポツキャンペーンのアイテムなの。 ちょうど当選コードを持ってたから、お店に行って引き換えてきたってわけ」
「当選っていうと……ポツったーはクジもできるのか? 」
「クジ……ではないけど、とにかく、お金は掛かってないから気にしなくて大丈夫よ」
「そっか……でも、せっかく当たったのに貰っちゃって悪いな」
「いいの、それヒメカの推しじゃないし」
「……? 」
「広げてみればわかるわよ」
そうヒメカに促されローブを広げると、そこには猫のマスコットキャラクターを抱きしめた銀髪の少女がデカデカとプリントされていた。
「こ、これって……」
「日曜朝のヒロインこと、マジカルスターフェアリーのシルバースター。 レイちゃんよ」
「ま、マジか」
説明しよう!
マジカルスターフェアリーとは、日曜日の朝に放送されているドラマ仕立てのダンジョン攻略番組マジスタ☆ダンジョンライフで主役を務める五人組のアイドル的冒険者グループなのだ。
マジスタ☆ダンジョンライフは”主に小さな女の子を対象とした番組”だが、マジカルスターフェアリーは大きなお友達にも人気があるぞ。
「これ……俺が着るのか? 」
「今の格好のまま外に行くわけにはいかないんだし、仕方ないでしょ」
「そ、そんな~! 」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。