世界は笑いと混沌で満ちている。

金と銅のモドキと言われた金爛石と銅爛石が新たなエネルギーへと変わり、アタノールは底辺の街から一攫千金を夢見る者たちが集まる街へと変貌を遂げた。蒸気機関が栄える街に包丁を携えて向かうのは、料理人を目指す少女ソレイユ。アタノールへ続く列車の道中、魔王の手先たちの襲撃を食らったことで、彼女の運命は笑いと混沌へ導かれていく――。

全てのページで作者様のセンスをこれでもかと浴びることができます。作中でソレイユがオーナーを務めるバル・ガラクタのショーが随所に描かれるのですが、その「危険で背徳的で何が起きてるかわからないけどとにかく楽しい」ショーがそのまま作品になったような印象を受けました。何を言っているのかわからないと思うのですが、読めばわかる。

英雄学園や階級制度など、テンプレに対するアンチテーゼ的な見方も面白かったです。読み進めるうちに「この世界は変わらなければならないな」と思うのですが、まさかあんな変わり方をするとは予想だにしませんでした。でも笑顔ならいいんじゃないかな、例え混沌だろうとも。

最初から最後まで無駄なくノンストップで紡がれるブラックユーモア×スチームパンクは衝撃的でした。何を見せられたのか未だに咀嚼しきれずにいます。それくらい読者に問いかける力を持った作品だと思います。運命の恋が、本当に世界を変えちゃったのですから。

この衝撃、ぜひたくさんの人に味わって頂きたいです。

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