金と銅のモドキと言われた金爛石と銅爛石が新たなエネルギーへと変わり、アタノールは底辺の街から一攫千金を夢見る者たちが集まる街へと変貌を遂げた。蒸気機関が栄える街に包丁を携えて向かうのは、料理人を目指す少女ソレイユ。アタノールへ続く列車の道中、魔王の手先たちの襲撃を食らったことで、彼女の運命は笑いと混沌へ導かれていく――。
全てのページで作者様のセンスをこれでもかと浴びることができます。作中でソレイユがオーナーを務めるバル・ガラクタのショーが随所に描かれるのですが、その「危険で背徳的で何が起きてるかわからないけどとにかく楽しい」ショーがそのまま作品になったような印象を受けました。何を言っているのかわからないと思うのですが、読めばわかる。
英雄学園や階級制度など、テンプレに対するアンチテーゼ的な見方も面白かったです。読み進めるうちに「この世界は変わらなければならないな」と思うのですが、まさかあんな変わり方をするとは予想だにしませんでした。でも笑顔ならいいんじゃないかな、例え混沌だろうとも。
最初から最後まで無駄なくノンストップで紡がれるブラックユーモア×スチームパンクは衝撃的でした。何を見せられたのか未だに咀嚼しきれずにいます。それくらい読者に問いかける力を持った作品だと思います。運命の恋が、本当に世界を変えちゃったのですから。
この衝撃、ぜひたくさんの人に味わって頂きたいです。
こんな世界を待ってた。
と、正直に思いました。
料理人になるという夢を持ち、アタノールに訪れた主人公ソレイユ。
苦難あって、やっと夢の街に辿り着いた、その時。
ソレイユは運命の出会いをすると同時に、恋に落ちる。
絶望から、一瞬にして救いが現れ恋心に染めていく。
しかし、眩い恋はここまで。
ここからは、読者すら飲み込んだ筆者様のセンスが光るブラックユーモアに溢れたストーリーが展開する。
嵐のような展開だが、その中心にはしっかりと前を見るソレイユとその恋人アーサーがしっかりと手を繋いで立っている。
その姿に見るのは、狂気かもしれないがそれがまた良い。
二人の愛の物語でもあり、壮大なる世界を変える物語でもある。
是非とも、最後までお読み頂きたい。
ラストまで拝読して一言。
構成力が凄いです。
閑話回を余すところなく生かしていますね。
物語は、スチームパンク風のダークファンタジーで進んでいきます。ハロウィンのこの時期にとても合う世界観だなと思いました。
ペーソス溢れる木曜日さんの作品ですから「すんごい事になってるな」と、思いつつも続きが読みたくなる。
また同時に、作者さんの問いかけも随所に見られ考えさせられました。
ラブリィちゃん、こんなん好きになるに決まってる……なラストでした。
捻りが効いているし、何よりもセンスが良くて最高です。
こんなに素晴らしい作品、ありがとうございました。
スチームパンク風の世界観に、厳しい階級と、魔王と勇者の戦い。
どんな話だろうと紐解くと、主人公のソレイユ・ドンローザの爽快な持論とパフォーマンスを見ることができます。
階級をものともしない度胸。
愛する者(推し)に対する惜しみない情熱。
たゆまない料理への探究心。
そして、勇者に向けた憎悪。
是非、高級レストラン『バル・ガラクタ』に足を踏み入れて、それを堪能してもらいたいです。
錬金の街『アタノール』で、顔だけは良いという、コメディアンドクター・アーサーを見つけたら、その彼を連れて行くと、さらにいいかもしれません。
二人が変えたがるこの世界を知って感じてもらいたいです。
最後まで読み終えて思ったことは「もう一度、ソレイユとラブリィちゃんが笑っているところを読み返したい」でした。
読み終えた今なら、また違う感覚で読めるはずだから。
厳しい階級制度やそこに生きるニンゲン達の様子から、薄暗い雰囲気が伝わってきます。
けれど、この二人だけは違う。
その姿が出てくるだけで、ぱっと空気が変わってしまうんです。
それはなぜなのか。
ソレイユのおいしそうな料理に、滑りがちなコメディアンのラブリィちゃん。
ジャンルは違うけれど、共通してある想いが込められているから。
だからこそのあの二人の世界。すばらしいです。
ぜひ、読んで確かめてください。
魔王と勇者の終わらない戦いに疲れた人間たちの国には、歪な階級制度や、英雄を輩出するための学園などがあり、ファンタジーと、蒸気機械技術や鉱石が豊富な錬金街というスチームパンクの、ハイブリッドな世界観だ。
仄暗いのに色鮮やかで、アグレッシブで常にトップスピード。
そんな『真夜中の遊園地』のような物語は、刺さる人にはドハマりする不思議な魅力にあふれている。
ソレイユは素晴らしい料理の技術と、そしてラブリィちゃんへの揺るがない恋心でもって、高級ショーレストランを経営している。
そしてラブリィちゃんことアーサーは、顔だけは超一流の、非常に胡散臭い男だ。感情が読めず、コメディアンなのに笑えない。
この異様な存在感の答えを知ったら、あっと驚くことだろう。
これは『バル・ガラクタ』という錬金街のレストランを成功させる、という単純なストーリーではない(蒸気機械と鉱石を組み合わせた料理法ももちろん魅力的だ)。最底辺でも楽しく生きようともがく人間たちの生き様だけでもない(ソレイユと勇者とのバトルは手に汗握ること間違いなし)。
なぜ『笑譚』なのか。
是非最後まで読んで確かめていただきたい。
オススメです!