第15話 蘇人の屋敷 Ⅰ
スクナに案内された、立派なかやぶき屋敷は5本の巨木に守られるように建てられており、大きく広がった木の葉が茅葺屋根を覆い隠していた。
「どうぞ、遠慮なさらずおはいりください。
すぐにお部屋を用意いたしましょう」
スクナがそういうと、二人の巫女が先に入り、入口、廊下、と柱につけられたランプにポウと光をともしていく。
本当に不思議な形だ。
縦の上の部分につながっている横向きの瓢箪型のガラス容器には、ガスのような何かが入っているのだろう、かすかな揺らぎが柔らかい円球の形で流れている。
「ほおうほおうほ。
都会からいらしたお方にも珍しいですかの」
スクナが笑う。
「はい。とても」
素直に安寧が言った。
大広間に通される。
正面には、大きな
安寧は、思わず手を合わせ、
「鏡と玉。二つのご神体とは珍しいですね
お社を分けられなかったのですか?」
「分ける必要は、無いのです。
吾らの祖、ツクヨミ様は、ここには降りてこられず、玉比売と鏡比売二人の娘を依り代になさるのです。この鏡と玉は、二人の娘をここから見守る安全装置なのです」
「すみません。仰ることが良く理解できません」
「吾ら一族は、アマテラス様の子孫、スメラミコトをお守りするために降りてきた一族です。けれど、ミコト様が起の国を平定されて黄國とされてからは、無用の長物となってしまいました。
それゆえ、極力人と交じらわず
ところが、時折、
そういう、不届きものが表れて、おのが力を過信し世を乱そうとする。
あなた様ご一家には、大変申し訳ないことを致しました」
「あの、都築さんが私達にしたことをご存じなのですか?」
「はい。
吾らも生きていく上で必要なもの、また、隠れていてもこの世界とともに変わらねばならぬこともありますゆえ。子を持った一家をひと時、村の外へ出すことがあります。聡さんを育てた御剣の家族がそうです。そういった家は、蘇都とうちのパイプ役になってくれてうちの情報を集めてくれます。
御剣の家から躑躅が聡さんを連れ出した時から今までずっと聡さんを見守っておりました」
安寧は、驚きで何をどう話せばよいのか。
押し黙ってしまった。
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