第18話 力を求めて

ここまで語って安寧やすしは、両手で顔をおおったあと大きくため息をつき、額をさすった。

「スクナ様の危惧は、おおむね合っていた。

けれど、スクナ様の予想以上に躑躅つつじは、力をつけていた。

現代の火力だ。

 玉比売である珠緒さんが、『落とし子』でも一族の者でもない亮と結婚するために、ツクヨミの力を『おっかさま』に返し、二人の間に生まれた環が乳離れした頃合ころあいを見計らって、環を奪いにきた。

スクナ様と私は、村に残って躑躅一派と戦い足止めし、亮夫婦は、アセビという環と同じ年ごろでとても潜在能力のある、スクナ様が選ばれた娘を連れて逃げた。

そのかげに隠れて別ルートで聡夫婦が環を連れて逃げた。

本当は、二組ともに無事逃げきってほしかったが、亮夫婦は、躑躅につかまり、アセビと珠緒さんを守って亮は、死んでしまった。

ここにいる鳥生さんが、亮から連絡を受けて駆けつけてくださった時には、アセビは躑躅に奪われ、珠緒さんが亮の亡骸の上で血だらけで意識を失っていたそうだ。

だから、環、瑠奈さん。

君たちが、本気で曜子さんを躑躅の罠だと分かった上で助けに行こうとしているのなら、蘇都そとの世界の『おっかさま』の所へ行き、珠緒さんが返したツクヨミの力を手にするのだ。

そして、スクナ様が躑躅から隠された、『十種の神宝』を手に入れるのだ」


安寧が二人を交互にじっと見る。

深く頷く環と、涙を流しぶるぶると震えている瑠奈。

気付いた杜若とじゃくが、瑠奈の震える肩に手を置き、ハンカチを渡す。

「そして杜若。

今、話したように君は、私の実の孫で『落とし子』だ。

曜子さんを助けに行く前に、聡に会ってきちんと話しをしなさい」

そのつもりでした。

と言いたい気持ちをぐっとこらえて、

「環さん。瑠奈、ちょっと父さんと話しをしてくる。

必ず二人と母さんを助けに行くから、少しだけ待っていてくれないか」

言い終えると、杜若が立ち上がった。

「私も、私もとうさんに会いたい」

立ち上がりかけた瑠奈を杜若と反対側にいた紫衛が、そっと押さえた。

「瑠奈。あなたには、私から大切な話しがあるから、ここにいてほしいの」

紫が、優しく諭すように言った。

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