第14話 柘枝村 Ⅲ

 古いつり橋を渡り、けもの道を少し歩くと山の清流が小川となって流れていた。

曜子は、道の小石を拾うと小川の向こう岸の2本の巨木の間に投げた。

何も無い空間へ投げられたはずの小石は、コンと音を立てて跳ね返る。

「えっ」

3人が驚いていると、2本の巨木の間隔と同じ幅の立派な門扉が突然現れ、こちらへ向かって静かに降りてくる。

最後まで降りきると、小川にかかる橋になった。

「頑丈ですから、安心して渡ってください」

そういうと率先して曜子が門扉の橋を渡る。

その後を、3人がゆっくりと渡る。

全員が渡り終わり、村の入口の広場に入ると静かに門扉が上がっていく。

門扉の上がる様子と、上がりきった門扉が今度は、何もない空間に見えていくさまを口を開けて眺めていた3人が、ふと人の気配に気づいて振り返ると、いつの間にか10人ほどの村人が広場に来ていた。

「私、民族学者をしています武ノ内安寧やすしと申します。

こちらにいるのは、二人の息子で、亮と聡です。

聡が、幼いころこちらでお世話になっていたそうで、まずは、ありがとうございます。

けれど、そうなった経緯について、2人の息子達が知りたいと申し、私も同意しましたので、不躾ぶしつけとは存じますが、こうして突然訪問させていただきました」

「遠いところをよくぞおいでなされた。

は、この村の長老でスクナと申すものです。

見れば、聡は、怪我をしている様子。

縁ある御剣の家でまずは手当てをして、武ノ内さまは、吾が屋敷へお越しくださいませ」

巫女姿の若い女性二人に付き添われた小柄な老婆が言った。

すかさず曜子が

「聡さんこちらです」

と自分の家へ案内しようとする」

亮と聡が安寧とそれぞれ顔を見合わせる。聡が大丈夫。という風に深く頷くと2人も軽く頷いて、スクナの云う通りにした。



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