肉汁は肉しみを呼ぶ
「あっ、すみませんガルシアさん! すぐ戻ります!」
「すいませんじゃねえよ! 何やってんだって訊いてんだよ!」
やらた気とガタイのでかい、上官らしき男が湧いてきた。
すごいな。タッパだけなら西本さんと同じくらいありそうだな。まあ器は遥かに小さそうだけど。
「いえ、その」
「何だ! ハッキリ言わねえとわからねえだろ!」
「邪魔なんだけど。どいて」
「あぁん!?」
意外にも、よくわからない剣呑な空気をぶち壊したのは、いつの間にやら席を離れていた玲華だった。
器用に人差し指一本でお皿を支えながら、もう片方の手でピタもどきを食べている。凄いけど行儀悪いな。
いや、今はそこじゃなくてだな。無用なトラブルは避けたかったんだが。
「てめぇ、誰に向かって口聞いてるかわかってるのか!?」
「?
「ああん? いや、誰に口聞いてるかわかってるかと訊いてるんだが?」
「? っん。目の前に居るじゃない」
「……なんだろうな。会話が全く通じていない気がするのは気のせいか?」
いや、気のせいじゃないと思うぞ。多分お前とは致命的に相性が悪いだろうな。
玲華のせいで、振り上げた感情の下ろし処を見失った哀れな奴。
「? とりあえずどいて欲しい。そこはわたしの席」
「ふん」
おとなしく横にずれ、結果的にアディソイ書記官に背を向けて立つような格好になった。
なんでまだ居るんだ君は。
「あ、あの……」
「ん? そうだ! お前は何をしてんだこんなところで!」
藪蛇ってまさにこれだと思う。実は、こいつにこき使われるのが満更でもないとかなのか?
「彼らは音に聞く
「おお?」
おいおい。
お前が話を広げるのか。
「コンノ、とかいうのは誰だ。お前か?」
「違う。私は西本だ」
「なんだ居ないのか。臆病風にでも吹かれたか? まあいい」
どこまでも
……
「この中で一番強いのは誰だ?」
えぇ……。
まぁ、西本さんかな。
「「「こ」いつだ」の人」です」
佐藤
↗ ↘↖
月島 西本
「「「……」」」
いや玲華はさておき西本さんは謙遜が過ぎるだろう。
「よし、模擬戦に付き合え。面倒な手続きは
「えっあっはい!」
「いや、まだやるとは言っていないが?」
「西本さん、いいですやります。この巫山戯た輩が二度と紺野隊長の名前を口にできないくらいまでぶちのめします」
「ほぅ……大きく出たなぁ?」
にやにやと下衆な笑みを浮かべるガルシア何某。
「……加減はしてやれよ」
「模擬戦ですから当然です」
「ふん。泣いて詫びても知らんぞ」
「そちらこそ修理の見積もりでも出しておけ」
「チッ」
それ以上は特に言い返さずに去って行った。なんなんだあいつ。
結局名乗りもしなかったな。完膚無きまでに叩きのめしてやる。
「あの……本当に申し訳ありません。この埋め合わせは必ず致しますので……」
「もういいよ。手続きお願い」
「は、はい。……でも嬉しいです! まさか、かの第三支部の方の戦闘を間近でお目に掛かれるとは思っても居ませんでした!」
ほとほと純粋そうに見えるアディソイ事書記官には少し呆れてしまう。
「我々は見世物ではないのだがな。まあ、ガルシアとやらが気の毒ではある。機体がお釈迦にならなければいいがな」
思わずといった形で西本さんが口を挟んだ。まあそれはそうだが俺はそこまで非常識ではない。せいぜい中の人が
「さて、機体整備等もありますので私達はこれで」
「あ、ありがとうございました。ご武運を!」
「ああ」
さて、気乗りしない模擬戦はさっさと終わらせてしまおう。
「これおいしい」
「まだ食ってるのか玲華」
「だってタダだっていうから……」
「そう……」
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